今年の大統領演説は
過去よりも未来志向
尹錫悦大統領は「三一節」で行った演説で、独立運動の精神の継承を強調した。
尹錫悦大統領は演説で、「104年前の三一万歳運動は、己未独立宣言書と臨時政府憲章に見られるように、国民が主の国、自由な民主国家を立てるための独立運動だった」と規定した。
さらに「104年が過ぎた今日、われわれは世界史の変化にまともに準備できず国権を喪失して苦痛を受けた過去を振り返ってみる必要がある」とし、「われわれが変化する世界史の流れを正確に読めず、未来を準備できなければ、過去の不幸が繰り返されるのは自明」と述べ、世界史の流れを正確に読み、未来を準備することの重要性を強調した。
その背景には、文在寅前政権が現実を無視し、北朝鮮の脅威に適切に立ち向かわなかったことがあるのだろう。文在寅政権は、北朝鮮の核ミサイルの脅威を極小化し、偽りの平和を宣伝して韓国の安全を脅かしてきた。北朝鮮の核ミサイルの脅威によって、韓国は北朝鮮に従属する国になりかねない危険性を直視する必要がある。尹錫悦大統領は、それを国権の回復を目指した三一節に合わせて指摘したものと考える。
日本については「三一運動から1世紀が過ぎた今、日本は過去の軍国主義侵略者から、われわれと普遍的価値を共有して安保と経済、そしてグローバルアジェンダで協力するパートナーになった」とし「特に複合危機と深刻な北の核の脅威など安保危機を克服するための韓日米3カ国協力が(今まで以上に)重要になった」と強調し、日本とのパートナーシップを前面に打ち出した。
演説では徴用工問題や慰安婦問題などの懸案には触れず、日本に対して謝罪や反省を要求していると捉えられるような言及もなかった。
尹錫悦大統領の演説を、文在寅前大統領が2018年に行った三一節の演説と比べれば、後者は独立運動について詳細に述べ、「加害者」「反人倫的人権犯罪」などの表現を用いて日本に反省を促したのと対照的である。
高麗大学政治外交学科の朴鴻圭(イ・ホンギュ)教授は、三一独立運動の始まりとなった独立運動宣言は、「古い時代の遺物である侵略主義と強権主義が支配する世界観を抜け出し、人道主義と正義が実現される世界観を提示し、日本を包容する知的勇気を発揮した。輝かしい文化知性の灯の下、彼らが先に日本に向かって腕を広げ、その結果、武断統治から文化統治へと転換を引き出した」ものであると指摘する。
三一独立運動の精神が、尹錫悦大統領に近いか、文在寅前大統領に近いか、朴教授の説明を聞けば自明である。
また、尹錫悦大統領の精神は、日韓関係で優先すべきものは「過去」ではなく「未来」だとする、前述の全経連調査に表れた若者の認識とも一致する。
尹錫悦大統領になって以降、過去のしがらみから抜け出し新しい韓国を志向しようという雰囲気が出始めている。