コンサル大解剖Photo by Masato Kato

世界で最も存在感のある戦略コンサルティング会社「ビッグ3」の一角である米ボストン コンサルティング グループ(BCG)。超一流の人材と顧客を抱えるBCGのトップは、グローバル経済や企業を取り巻く環境、コンサルビジネスの未来をどう展望しているのか。約37年にわたってBCGに勤め、2013~21年にはCEO(最高経営責任者)として同社の躍進に貢献したリッチ・レッサー会長のインタビューを3回にわたってお届けする。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、インタビューの前編として、トランプ関税で顧客企業がBCGにどんな「助け舟」を求めているかや、危機を乗り切るための経営者に求められる4つの条件を語ってもらった。(聞き手・ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「関税は米国が積極的に活用できる強み」
BCG会長が語るトランプ政権の3つの注目点

――トランプ政権の誕生で世界が激変しています。どんな点に注目していますか。

 国際的な観点で、トランプ新政権の影響は極めて大きいでしょう。まず、貿易は明らかに注目を集めています。トランプ氏は、貿易相手国とのバランスの取れた関係を望むことを明言しており、関税について、米国が積極的に活用できる強みになると考えていることも明らかです。

 関税に関してトランプ氏はいくつかの意向を発表しており、鉄鋼やアルミニウムのように既に実施したものもあれば、検討中のものもあります。アメリカ大陸の貿易関係に新たな力学が生まれ、各国が貿易に関して米国とどのように関わってきたのかという歴史的規範に圧力がかかることになるでしょう。これが一つ目のポイントで、おそらく企業が最も気にする影響だと思います。

 二つ目のポイントは国際安全保障に関するもので、国防への投資拡大が推進され、その傾向が続くでしょう。新たな傾向ではないものの、特に中国への懸念や、米国と欧州の力学の不確実性が大きくなっています。まだ初期段階で、どうなるかは分かりませんが、欧州は80年間にわたって続いてきた常識が覆されるのではないかと疑問を抱いており、安全保障のために米国が長年要求してきた防衛への投資を増やすよう、圧力がかかっています。欧州の自衛能力の独立性を高めることも目的です。

 三つ目は、全体的な基調の変化です。貿易や安全保障、その他のトピックでも、短期的な取引関係よりも、長期的な期待に基づいて構築された、地に足の着いた関係が重視されると私は見ています。

トランプ政権の誕生や関税政策について、BCGは顧客企業からどんな助言を求められているのか。そして、BCGはどう答えているのか。次ページでは、トランプ関税を巡りBCGが重視しているポイントや、危機を乗り切るために経営者に求められる4つの条件をリッチ・レッサー会長に語ってもらった。