儲かる農業2025 日本の夜明け#20Photo by Hirobumi Senbongi

日本最大の青果市場、東京都の大田市場における総売上額の80%超を占める青果卸のガリバー、東京青果で、深刻なガバナンス不全が生じている。同社を25年以上にわたり牛耳ってきた川田一光会長と、息子の川田光太社長による「親子独裁」により、けん制機能が働きにくくなっているのだ。特集『儲かる農業2025 日本の夜明け』の#20では、その一例として、パワハラなどの労務問題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

経営陣の問題を指摘した社員を冷遇
総務部長がパワハラ、セクハラを行う呆れた実態

 山崎豊子氏の小説『沈まぬ太陽』は、航空会社の労働組合活動で経営者の逆鱗に触れてしまった主人公が、ケニアの首都ナイロビに左遷されるなど不遇の会社員人生を強いられる物語だ。

 青果卸最大手の東京青果で、同小説のような組織的なパワハラが行われていた疑いが浮上した。

 パワハラを受けたのは、会社の人事施策が、労働基準法や労働契約法違反に当たる可能性があることを指摘した総務部の女性社員だ。川田光太社長(当時は常務)に、法律に抵触するリスクを直訴したが、返事をもらえなかったばかりか、定年後の嘱託業務で、経験したことのない営業部門に異動を強いられて体調を崩した。

 その後、労働基準監督署に相談するなどして、ようやく総務部に戻れたが、心身に強いストレスがかかる孤独な業務を命じられ、結局は退職を余儀なくされた。

 この女性社員のケースは、同社を25年以上にわたり牛耳ってきた川田一光会長や、息子の川田光太社長ら幹部に異を唱えると、組織的に排除されるという“見せしめ”の効果を発揮したとみられる。

 次ページでは、東京青果でイエスマンが蔓延る要因となっているとみられる「恐怖支配」の実態を明らかにする。