ふさわしい言葉は部下への関心によって見つかる
「人間関係が良好で笑顔の多い職場は業績がよくなり、業績がよくなれば、職場の笑顔はさらに増え、人間関係はより良好となる」と水口先生はメッセージする*6 。笑顔を生む要因のひとつが、「褒めること・褒められる」ことだが、「部下をどのように褒めれば良いのか」に頭を悩ます上司も多いようだ。
*6 龍谷大学文学部 教員紹介「Faculty Letters」水口政人より
水口 褒め言葉や感謝の気持ちを伝えるときに、「どんな言葉がいいだろう?」と気張って考える必要はありません。褒められた部下が、「うれしい!」と感じたら、それでいいのです。ただ、「本人がうれしいと思う」ということが肝で、それが結構難しい。嫌いな上司に褒められたって、うれしくないでしょう。「何かの裏があるのでは?」と勘ぐられたりする。また、「褒めても、うちの部下は動かない」と嘆息する上司の方もいますが、動く・動かないは“日常の関係性”によるところが大きいです。関係性が悪いと、褒め言葉も上滑りする。職場での何気ない対話や雑談を含め、上司と部下の間で培われた“良い関係性”がベースになるのです。そのうえで、“褒める・感謝する”を積み重ねていくこと――強く叱ることで関係性がなおさら悪くなると、褒めることが意味をなさなくなります。
関係性を構築するための起点は、「相手に関心を持つこと」だろう。部下に関心を持ち、部下の個性に合わせた“褒める・感謝する”を示すことで部下の行動が促進されると水口先生は解説する。
水口 上司が部下に、部下が上司に興味関心を持つことが職場での働きがいにつながります。そして、興味関心から、褒める・感謝する/褒められる・感謝されるといった行為が生まれ、それが仕事の喜びを創出していきます。肝心なのは、「部下のAさんは、何を喜ぶ人なのだろう? Bさんはどうだろう?」と、上司が考えることです。相手から「ありがとう」と言われることが生きがいの人もいれば、仕事の裁量だけが欲しい人もいます。何に喜びを見出すかは人それぞれ違います。新しい業務にチャレンジしたい部下も、現状維持が良いと思う部下もいるでしょう。Aさん・Bさんが欲しているものを知り得ないと、上司の口から出るのは定型的な褒め言葉ばかりになります。伝える言葉の精度を高めたいなら、Aさん・Bさんがそれぞれにどんなことを喜ぶのかを把握すること――そのために、相手への興味関心は欠かせません。なお、相手が何を喜ぶかはそれぞれですが、“褒める・感謝する”は多くの人に効果が期待できます。
調査概要:調査方法:インターネットアンケート調査(全国)/調査対象:企業に勤める部下(20~30歳)、上司(45~60歳)/有効回答数:1,000人(部下500人、上司500人)/調査期間:2022年1月11日(火)~13日(木)
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