“内省”はどのように行っていくのが効果的か?

 龍谷大学の行動哲学である「自省利他」――この言葉から、水口先生は、ビジネスパーソンに必要な「内省」という言葉を思い浮かべるという。「内省」は、自分の心と向き合い、自分の考えや言動について省みることで、1on1ミーティングの目的のひとつも、「内省」の促進だ。

水口  昨今、ビジネスパーソンの“仕事の時間感覚”はとても速くなっています。日本が国際的な競争力を弱めるなかで、労働者一人あたりの業務量が増え、多忙な私たちは自分のことを振り返る余裕がなくなっています。そんな状況下、自分自身に改めて向き合い、考え方や行動を省みることはとても大切ですが、時間と場所を決めて行えている人はあまり多くはないでしょう。私の場合は、お風呂に入って湯船に浸かっている間は、「内省」にあてると決めています。今日一日何かまずいことがあったか、あの場面ではどうするべきだったか、などを考える時間です。一人で内省する場合は、いつ行うかを決めるのがポイント。時間がたつと忘れてしまうので、できれば、一日一回が良いでしょう。

 また、一人での内省は、自分の知り得る範囲で終わってしまうことが多いので、コーチングやカウンセリングのように、第三者との対話を通じて行うことにも価値があります。「いま、話しているうちに考えがまとまってきました」「答えていて気づいたのですが……」といったふうに、聞いている人から質問を受けることが内省を深めていくのです。

 “内省は、自分一人で行うもの”というイメージがあるが、他者の手を借りた方がよいのだろうか?

水口 両方あってよいと思います。一人で省みる時間があって、さらにもう一段踏み込むかたちで、聞き役や伴走者がいるといい。組織における1on1ミーティングが、まさにそのかたちです。しかし、上司と部下の1on1だと、上下関係が先立って内省がうまくいかないこともあります。ですから、最近は、直接の評価者でない方が、若手社員のメンターとして1on1を行う企業も増えています。評価がなく、かつ、守秘義務があれば、あらゆることを言葉にして振り返ることができます。人事部が調整役になり、A部署のベテラン社員のXさんとB部署の若手社員であるYさんを組み合わせていく――こうした1on1ミーティングやコーチング、カウンセリングなど、効果的に内省を行う方法はさまざまあります。