銀行を救済すると、モラルハザード(最終的には救済されるという考えから、より大きなリスクを取ってしまうこと)への懸念が広がることが多い。今回、多くの識者からよく聞かれるのは、銀行の行動監視を預金者(多額の保険対象外預金がリスクにさらされている、賢明な大企業でさえも)に期待するのは無理という指摘だ。この指摘は正しくもあり、ひどく間違ってもいる。また、シリコンバレー銀行(SVB)と、より規模の小さいシグネチャー・バンクの破綻を受け、われわれが社会として銀行システムのあるべき姿を考える上でも重要だ。SVBがどんなリスクを取っていたかは今でこそ明らかだが、破綻前に大口預金者がそれを特に気にしていなかったというのは、その通りだ。動画ストリーミングプラットフォームを手掛けるロクは、手元現金の4分の1に当たる4億8700万ドル(約650億円)を同行に預けていた。SVBの大口預金向け金利は、顧客がMMF(マネー・マーケット・ファンド)を通じてその預金全額をTB(財務省短期証券)などの安全資産に投じた場合に得られるリターンの半分にも満たなかったというのにだ。顧客はただ、手間をかけてまで取引銀行の詳細を調べようとは思わなかった。