その書籍とは、今年1月に発刊された『稲盛和夫 明日からすぐ役立つ15の言葉』(三笠書房)。筆者は、稲盛氏が「私の副官」と呼び、京セラ秘書室長などとして約30年にわたり側近を務めた「側近中の側近」大田嘉仁氏(元京セラ常務秘書室長・元日本航空会長補佐)だ。大田氏が長きにわたる秘書人生の中で学び取った「15の言葉」(以下参照)について、多くのエピソードを交えながら平易な表現で稲盛哲学を解説した力作である。
1. 謙虚さは「魔除け」になるんだ。
2. 成功を「試練」と思えるか、どうか。
3. 素直に言って、素直に叱られて、素直に反省する。
4. 人生は、死んでからのほうが、長い。
5. 「過去」を否定しては、ダメなんだ。
6. 「怖がり屋」だから、周到な準備ができる。
7. 悪いことを思うと、人生そのものが悪くなる。
8. 芸妓さんに気を配れば、芸妓さんは喜ぶ。だからお客様も喜ぶ。
9. 「人間として何が正しいか」で判断すれば、間違いはない。
10. 人から嫌われたくない人は、結局、うまくいかない。
11. 昨日よりは今日。今日よりは明日。明日よりは明後日。
12. 掃除を「創造的に取り組む」と、どうなるでしょうか?
13. 仕事の「こだわり」が、仕事をダメにすることもある。
14. いいリーダーとは、「現場の力」を引き出すリーダーだ。
15. 見えてくるまで、考えよう。
「なぜ俺に、七味唐辛子を渡さないんだ!」。約30年前、稲盛氏が大田氏に会長室で怒りの声をあげた冒頭の逸話は、いきなり卑近で意外感に溢れるものだ。
“怒り”の真意は同書に譲るが、大田氏は執筆時の狙いについて「稲盛さんが『経営の神様』などと言われ、神格化され過ぎていると感じていた」と指摘。「高尚な理念を説く神様のような人物ではなく、もっと人間味に溢れる身近な存在に感じてもらいたかった」と話す。実際、刊行後は稲盛氏が創業した京セラや再建した日本航空(JAL)の幹部や社員から、「稲盛さんの人となりがより分かるようになった」との声をもらったという。