2024年入試対応!わが子が伸びる中高一貫校&塾&小学校#24Photo:PIXTA

中学受験の過熱ぶりから、有名中学受験塾の席を確保するべく、小学校1~2年から通塾する子どもが増えている。特集『わが子が伸びる中高一貫校&塾&小学校』(全29回)の#24では、どんな塾を選ぶべきか、そして親はいかにあるべきか、中学受験塾に詳しい教育家の西村則康氏と小川大介氏の対談をお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

西村則康氏×小川大介氏が分析!
低学年の塾通い急増の背景とは?

――小学校低学年から中学受験塾に通う子どもが増えています。

西村 低学年からの通塾の根底にあるのは、まさに親の恐怖心なんですね。しかし、焦りから塾通いをさせても良いことはありません。

 低学年の子どもに必要なのは、学習ではなく生活習慣です。それを後回しに、低学年の子どもを塾に入れれば成績が伸びる、能力が高まるという因果関係は成立しないと思います。重要なのは、わが子をどう成長させていくのか、子どもに安心感をどのように与えていくかということ。低学年の子どもに一番大切なことは「安全の確保」です。では、子どもにとっての安全は何かといえば、お母さんの機嫌なんです。そして、学習は安心できる環境の中でしか進まない。

西村則康氏と小川大介氏(左)西村則康●プロ家庭教師集団 名門指導会代表
にしむら・のりやす/1954年生まれ。現職のほか「塾ソムリエ」としても活躍。中学受験情報局主任相談員。40年以上、難関中学・高校受験指導を行う。男女御三家や灘中など東西の難関校に合格させた生徒は3000人以上。『中学受験 入塾テストで上位クラスに入るスタートダッシュ 算数』(青春出版社)など著書多数。
(右)小川大介●教育家、見守る子育て研究所(R)所長
おがわ・だいすけ/1973年生まれ。京都大学法学部卒業。中学受験個別塾を創設後6000回の面談を通して、子ども本来の力を見つけ引き出し学力アップをかなえるノウハウ「見守る子育て」を確立する。長男も灘中、開成中、筑波大学附属駒場中など受験校全てに合格。『5歳から始める最高の中学受験』(青春出版社)など著書多数。 Photo by Akio Fujita

 だから、まず塾通いの前に見てほしいのは、親子関係がうまく成立しているのか否か。その上で、その学習は子どもの何を積み上げるためのものかを考える。子どもの成長曲線の中で、やれることとやれないことははっきりしているので、先走ってもまず何の意味もありません。低学年のうちは抽象的な概念の理解は絶対無理。より具体的なことを理解する年齢で先取り型学習をしても形式的に手順を覚えるだけに終わります。そんな誤った学習習慣がつくと、本格的な受験勉強が始まれば逆にマイナスです。

 塾の席の確保にも、そこまで神経質になる必要はありません。新小4で塾に入る場合、大規模校であれば2~3クラス分の定員が増えるのが普通で、定員に空きがない場合があっても少し待てば入れることが多いですね。

――低学年向けコースで能力開発型をうたう塾もありますが、そちらは?

西村 そうですね。(低学年の獲得に力を入れる)塾は大きく2種類あります。先ほどの先取り型と、能力開発型です。

 例えば、ある大手中学受験塾の低学年向けテキストを見ると、能力開発型で非認知能力を鍛える内容です。先取り型はまず効果がないので、それはそれでいい。ですが問題は、教材は非認知能力、つまりは点数には表れない学力を鍛えるタイプでありながら、毎月のテストの結果でクラス分けを判定している塾もあること。いわば自己矛盾しているわけです。

 そうすると親はテストの点数ばかり気になる。子どもが楽しげに通塾しているならば続ければいいですが、無理に行かせると逆効果になりかねません。

小川 西村さんの意見に僕も同意します。補足すれば低学年からの塾通いには、「塾通いを検討する」段階と、「実際に塾通いをする」という2段階があります。低学年からの塾通いを検討することはすごく良いことだと思います。

 なぜなら、新小4からの入塾で動く人の大半は、目先の入塾テストが迫ってからようやく動き始めるんですね。それでわが子の点数が思っていたよりも全然取れないと。もう、そこからの3年間は目先のテストに追い立てられて走り続ける親がものすごく多い。

 大手塾の場合、新小4のスタート段階からある程度の勉強ができていることが前提のカリキュラムになっているので、その準備ができていないと親は慌てて、子どもを追い立て続けるダメ受験サポートをやってしまいがち。親は皆、「そうしたくない」と願っているにもかかわらず、追い込まれてしまうんです。

次ページでは、低学年向けの塾の選び方や、逆効果にならないために親が肝に銘じるべきポイント、さらに、中学受験塾最強のSAPIXの低学年向けコースについて、西村氏と小川氏が語りつくす。