小学校低学年から追い込んで「勉強嫌い」にさせたくない一方で、準備なしに本格的な中学受験の勉強に突入するのは不安が大き過ぎる――。中学受験の準備はいつから始めればいいのか。特集『中学受験に勝つ! 最強の小学校低学年の教育』(全7回)の#1では、「ゆるやかに無理をさせる」中学受験を提唱する小川大介氏に、低学年のうちに準備しておくべきことを聞いた。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
低学年段階での勉強嫌いは
「親の執着」が生み出す
「低学年からの通塾や早期教育は親次第で吉と出る場合も、凶と出る場合もある」――。
灘中学校や筑波大学附属駒場中学校、男女御三家など多くの難関校に教え子を合格させた実績を持つ、「かしこい塾の使い方」主任相談員の小川大介氏は小学校低学年からの塾通いについてこう説明する。どういう意味か。
「中学受験を成功させるには、勉強に対して前向きな気持ちが不可欠です。ところが間違った勉強法のせいで、小学校3年生の段階で勉強が嫌いになっている子どもがたくさんいます。投げやりな答案を作る癖がついて、その修正を相談されることも多い。さらに怖いのは、自分は勉強が苦手だというセルフイメージを強く持ってしまうことです」(小川氏)
とはいえ、これは塾のプログラムが悪いわけではない。大手塾の低学年のプログラムは「なぞなぞやパズルなど年齢に応じた感覚に訴えることで興味関心を増やし、考える力を伸ばす方向」(小川氏)で作られている。
公立小学校の授業に満足できず、楽しく塾に通っている子どもも多い。実際、小川氏の長男は小学校2年生から浜学園の算数特訓コースに遊び感覚で通い、中学受験の最難関校である灘中、開成中学校、筑駒など受験した学校全てに合格している。
きれいごとを抜きにしても、中学受験塾にとって難関校への合格実績は最重要指標であり、子どもをつぶすような教育をわざわざするわけがない。では、なぜ「勉強嫌い」や「自信喪失」になる子どもが生まれるのか。
小川氏は「親が低学年のうちから偏差値や序列に執着してしまう。その結果、最悪の場合は子どもがつぶれてしまい、中学受験どころではなくなってしまいます」と指摘する。周囲に流され、親の不安を解消するために低学年から塾通いをさせると、高確率で勉強嫌いを生み出し、結果として足を引っ張る可能性が高いのだ。
一方、矛盾するようであるが、中学受験の勉強が本格化する4年生まで何の準備もしなくて難関校に合格できるかというと、令和の中学受験はそこまで甘くない。
「受験学習と幼少期の学習は別」(小川氏)であり、中学受験の勉強を乗り切るためには、受験学習の前に「学びの習慣」をつけておく必要があるからだ。ポイントとなるのは、正しく最新の中学受験事情を知り、わが子の特性を理解しているかどうかだ。
小川氏は中学受験の秘訣は「ゆるやかに無理をさせる」ことだとアドバイスをする。次ページでは、子どもを伸ばすための秘訣を子どもの適性や大手塾との相性、さらには親は何をすべきか、声の掛け方なども併せて開陳。本格的に中学受験の勉強を始めるための、幼児期、低学年、中学年からなど開始時期別のロードマップを紹介していく。塾名からアプリの名前、必要な時間まで全て具体的にお伝えする。