“聖域”を持つことに高まらざるを得ないテンション

 ガーデンオフィスは秘密基地然としたコンセプトを持つが、仕事が絡んでいる分、“聖域度”が増すかもしれない。秘密基地は単純にエンジョイするためのものなのに対し、ガーデンオフィスは「仕事をする場所」である。仕事とはその人にとって矜持(きょうじ)を持って取り組まれる神聖なものであり、かつその人をその人たらしめている根のようなものだ。趣味の聖域とはまた別の種の、不可侵の領域を持つのが仕事だろう。
 
 だからガーデンオフィスは、その聖域を持つことにワクワクした大人たちのテンションのほとばしりを垣間見ることができたりもして、これが面白い。うらやましさ、ほほ笑ましさ、滑稽さなどを感じさせてくれるのである。
 
 まず仕事に必要なものとして置きたいものは、本棚、およびそこに並ぶ書籍である。仕事中にその書籍群が本当に必要になるかは疑問なのだが、本はあるだけでその空間を知的に彩ってくれる優秀なアイテムであり、ガーデンオフィスには積極的に採用される傾向がある。そして他人がどう思おうが本人がどれだけその空間に入り込めるかが重要なので、本と本棚の導入はガーデンオフィス作りに極めて有益であるように思われる。本棚に100冊のマンガがある部屋と、100冊の専門書がある部屋、どちらの方が仕事がはかどりそうな雰囲気か…ということである。
 
 開放感や自然との融和を追求するあまり、壁が一面取り払われて半分屋外になっているようなものもある。自然(植物)に侵食された建物はラピュタのようで、見るだけで心躍らされるが、実際の利用を想定してみると気温・天気・虫・壁床調度品のメンテナンスなどなど、気にかけなければならないことが多すぎる。

 しかしそういった要素をなかったことにしてラピュタ風のガーデンオフィスが造られるほど、「ガーデンオフィス」というコンセプトは大人を狂わせるのである(あるいは、一般の人が気にするそうした点をまったく気にしない自然が大好きな人なのかもしれない)。
 
 筆者が個人的に気になっているのは、SF映画に出てくる、どこかの惑星で人類が暮らしているようなコンテナ型の住居である。定まった呼び方はないが、「スペースキャビン」や「スペースユニットハウス」といった呼称を確認した。

 一面が全面ガラス、四隅がとがらず丸みを帯びて、そこに暮らす人をいやが上にも未来人に見せてくれる。願わくは、あれが欲しい。国内の会社で95万円台というものを見つけたので、寛容なるダイヤモンド・オンライン編集部が、SF風コンテナ代も出してくれるという一縷(いちる)の望みを抱きつつ、本稿を入稿したい。