選別開始!倒産危険度ランキング2022#8Photo:mfto/gettyimages

不動産業界はコロナ禍の影響を比較的受けなかった業界といえるかもしれない。コロナ禍でも不動産市況は落ち込まず、都心の新築マンションは首都圏のビジネスパーソンにとって購入が難しいほどの高値にある。ところが、倒産危険度ランキングの不動産業界版では、16業界で最多となる69社が“危険水域”入りした。特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全20回以上)の#8では、景気後退による市況悪化の足音が近づく不動産業界を解説する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

大規模金融緩和を追い風に好調でも
忍び寄る景気後退の余波

 円安やインフレに悩まされて沈む業界がある一方で、不動産業界はこれまでのところ、比較的好調だった。日本銀行による大規模金融緩和の継続を追い風に、不動産投資は堅調に推移し、マンションや一戸建て住宅の価格も上昇を続けた。

 新型コロナウイルスの感染拡大によってリモートワークが普及し、オフィスを縮小・解約する動きもあったものの、オフィスマーケットは回復の兆しを見せている。

 オフィス仲介大手の三幸エステートがまとめたレポートによると、2022年9月の東京都心5区の大規模ビルの空室率は4.70%で、7カ月ぶりの改善となった。オフィスの募集賃料は1坪当たり2万7870円で、こちらも6カ月ぶりに上昇に転じた。コロナ禍によるマイナス影響はほぼ解消されたといえる。

 しかし今回の倒産危険度ランキングで、不動産業界で“危険水域”入りしたのは69社。16業界別では最多となったのだ。

 販売用不動産を保有する不動産会社は、有利子負債が大きくなりやすいという特殊要因から、倒産危険度を表す「Zスコア」が悪化しやすい傾向がある。

 もともと倒産危険度の危険水域に入りやすい不動産業界に、景気後退と金利引き上げによる市況悪化の気配が忍び寄っている。

 景気後退による住宅の購買意欲の低下や、企業の設備投資の抑制に加え、世界的な金利引き上げによる投資マネーの逆回転が懸念されるからだ。

 さらに23年からは大規模ビルの竣工ラッシュとなり、オフィスの需給が緩む可能性が指摘されている。これらは不動産マーケットを一気に冷やしかねないのだ。

 それでは、次ページから不動産業界の倒産危険度ランキングを詳報する。ワースト1位はある企業の株式を過半数取得して有利子負債が膨らんだあの企業だった。ランクインした財閥系を含む大手デベロッパーも明らかにする。