不動産デベ新序列 バブル崩壊前夜#3Photo by Ryo Horiuchi

東急不動産ホールディングスが首都圏で手掛けるマンションブランド「ブランズ」シリーズで、売れ残りが続出している。マンション市況の異変は、東急不動産の不調にとどまらず、中古市場にも及んでいる。特集『不動産デベ新序列 バブル崩壊前夜』(全6回)の#3では、上昇の一途をたどり「バブル超え」を記録したマンション市況崩壊の具体的なサインを示すとともに、マンションデベロッパーが採り始めた新戦略が抱えるリスクに迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

竣工から2年半経過も8戸売れ残り
「頑張った方じゃないですか」

 東急田園都市線あざみ野駅の改札口を出て、あざみの商店会沿いのほぼ平たんな道を歩くこと約8分。ベージュやグレーを基調とした5階建てのマンションが左手に現れた。

 2020年11月、東急不動産ホールディングスがカリタス女子短期大学の跡地に開発した大規模マンション「ブランズシティあざみ野」である。竣工から2年5カ月が経過した原稿執筆時点で、全286戸のうち8戸がいまだに売れ残っている。うち2戸は、1億円を超える「億ション」だ。

 マンション業界関係者の間では、ブランズシティあざみ野が販売当初から苦戦していた事実はよく知られていた。財閥系マンションデベロッパーのある社員は「完売まであと10戸を切ったのか。よく頑張った方じゃないですか」と皮肉を込めて言う。

 次ページからは、東急不動産がブランズシティあざみ野の販売で苦戦している理由に加え、中古マンション市場で生じた異変などマンション市況崩壊の具体的なサインをつまびらかにする。

 また、バブル崩壊前夜ともいえる中、マンションデベロッパーはこれまでの戦略を転換しつつある。新戦略が内包するリスクについても明らかにしていく。