企業が注目する「リレーション採用」と「インタツアー」

 Z世代の学生は生まれたときからインターネットに慣れ親しみ、さまざまなSNSを使いこなしているが、社会やビジネスについて、それほど多くを知っているわけではない。そのため、就活においては、いろいろな戸惑いに直面している。

作馬 先日、元Googleの人事担当として有名なピョートル・フェリクス・グジバチさんにお会いしたところ、「日本の学生は自己理解が弱い」と指摘していました。自己理解が弱いままで企業を選ぶのは難しいというのです。世の中には、どういう企業があって、どういう事業を行い、どういう働き方があるのかをあまり把握せず、自分によく合う会社があることを本人は知らないのかもしれません。そうした学生と自社をうまくマッチングしていくことが、採用活動の重要なテーマになります。

 経団連と全国の国公私立大などでつくる産学協議会が昨年(2022年)に提示したインターンシップの4類型も学生のキャリア形成支援を目的としていて *2、タイプ1の「オープンカンパニー」は学年を問わず、タイプ2の「キャリア教育」は学部生のうち特に低学年向けとしています。

 企業側としては採用に直結しない施策にはなかなかコストをかけづらいかもしれませんが、今後は“急がば回れ”の発想で低学年のキャリア形成支援に目を向けて、採用戦略を設計することをお勧めします。

*2 「HRオンライン」記事 「25卒採用“インターンシップ改革”で、人事担当者が知っておきたいこと」参照

 そして、“急がば回れ”のアプローチとして、作馬さんのインタツアー社が提唱しているのが「リレーション採用」だ。「リレーション採用」とは、いったいどういうものなのだろうか。

作馬 ひと言でいうと、「学生とつながり続けながら採用する手法」のことです。従来の採用プロセスは、学生からの接触が起点となる“待ち”のアプローチと言えます。最近、注目されているダイレクトリクルーティングも基本は希望者からの反応を待つものです。

 それに対し、リレーション採用は、自社への関心や興味にかかわらず、早い時期から、企業側が“学生のキャリア形成の支援”という視点で関わりを持っていくものです。マーケティング発想で学生にアプローチし、自社のファン=顧客になってもらうのです。

 具体的なサービスとして、当社では、社名と同じ「インタツアー」という学生向けの企業情報プラットフォームを構築し、学生たちが各企業の人事担当者や社員、経営層にインタビューするコンテンツを提供しています。

 インタビューを行う学生は、就活生のほか、1・2年生も対象にオンラインで募集し、事前に大きなテーマは決めておきますが、実際の質問内容は学生に任せています。ひとつの質問をきっかけに対話が深まったりして、学生にとっては社会人の生の声をストーリーとして聞くことができ、やり取りを通じて社風など冗長性のある情報、企業の様子がうかがい知れる機会になっています。

 その後、インタビューのレビューをSNSで発信したり、企業が定期的に情報配信することで“つながり”が継続し、自社のファン=自社のことをしっかり理解し、モチベーションの高い候補者を増やすことができます。

「インタツアー」はオンラインでの展開ですが、コロナ前から対面で同様のサービスを行っており、これまでに参加した企業は延べ5000社にのぼります。内訳としては、BtoBや中堅クラスの企業が多いものの、大手有名企業も多く含まれます。参加企業にとっては、採用の母集団が増えるというよりも、学生との時間をかけたやり取りを通して自社への理解を促し、母集団の中での“自社の求める人材”の割合が高まることがメリットです。