メルカリ、「フリマアプリの壁」を自ら打ち破った成長戦略を徹底分析Photo:Diamond

フリマアプリの先駆者「メルカリ」が、2023年2月に10周年を迎えました。4月28日には通期業績予想が、売上高1700億円、営業益135億円、最終益83億円と、創業以来最高となる見通しを発表しています。個人の“おうち時間”に急成長した同社のフリマ事業は、このまま成長を維持できるでしょうか。「製品ライフサイクル」の観点から、メルカリの戦略を分析します。(グロービス ファカルティ本部テクノベートFGナレッジリーダー 八尾麻理)

コロナ禍で国内の個人間取引は
堅調に成長   

 経済産業省によると、オークションサイトやフリマアプリを利用した個人間取引(一部法人を含む)の総額は21年に2.2兆円を超えました。コロナ前となる19年比約1.3倍、22年まで3年間の年平均成長率は実に11.7%となります。

 この成長を牽引(けんいん)したのが、自宅の不用品をスマホで簡単に査定・出品できるフリマアプリです。“所有から共有”に価値を置いたシェアリングエコノミーが根付く若者に加えて、コロナ禍で“おうち時間”が増えた会社員などが新たに流入して不用品処分に動いたとみられます。

 特に「AIによる商品説明の自動入力で、1分で出品が完了する」といった機能でアプリに定評のあるメルカリは、21年のアプリダウンロード率(重複あり、Statista調べ)において63%と、Yahoo!オークション(同58.4%)、ラクマ(同29.1%)を抑え、堂々の1位を獲得しました。

 その流通総額は、19年比1.8倍に膨らみ、22年6月期まで3年間の年平均成長率は市場全体の2倍となる22.1%に達しています。

メルカリ、「フリマアプリの壁」を自ら打ち破った成長戦略を徹底分析出典を基に筆者作成
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 一方、気になるのが、個人間取引市場におけるシェアの推移です。19年時点で既に31%あったメルカリのシェアは、コロナ禍に36%、40%と2年連続で伸長したあと、22年は横ばいでした。取り扱い商品の多くがファッションやエンタメ・ホビーなどの小型・低中価格帯であることも、伸び悩む一因でしょう。

 フリマアプリの先駆者として創業時から市場を牽引(けんいん)し、23年6月期の通期業績予想において過去最高を見込む同社ですが、流通総額の成長率は前年通期の12%増に及ばず、9%増に留まる見込みです。

 メルカリはこのまま失速してしまうのでしょうか。