企業と学生の双方を幸せにする方法は何か?

 インターンシップのあり方が変わり、内定出しが早まる傾向にあり、コロナの影響も今後どうなるかがわからない就活戦線――そんな現在(いま)、光城さんが、学生と企業に望むことは何か?

光城 とにかく、学生も企業も「就活病」をなくすこと。それで、企業と学生の双方が幸せになってほしい。

 世の中には「就活の常識やルールに縛られる必要がない」と考える企業も多くあると思います。そういう会社は、説明会や面接時でも「普段着で」と伝えたりしますが、結局、多くの学生はリクルートスーツで出席します。ですから、たとえば、「社員もスーツを着ていないので」とか「勤務時もそうなので」というように、説得力を持って伝えてあげるのも良いかもしれませんよね。

 他にも、志望動機を聞かない企業や、○○力や△△性など受け手が判断するようなものは、「無理やり考えなくていいよ」と伝える企業もあります。そうしたものは社員側が感じて判断するものだから、「学生の皆さんが気にする必要はありません」くらいのメッセージを出せたら、企業と学生はもっと深いコミュニケーションが取れるんじゃないかと思います。

「就活ビジネス」に踊らされながら、結局、就活病で多くの人が苦しんでいる。就活病の蔓延で、企業は、学生の素の姿や考えを見つけることができないまま、テスト結果や、学生時代の経験値などで合否を判断せざるを得なくなっていますよね。入社後に発揮できる力を想像できず、あくまでも、「学生としての評価」になっています。

 乱暴な言い方かもしれませんが、現在(いま)の就活や採用活動って、「失われた30年」と言われる平成の間で、大して変わっていないんですよね。「合わせて(就活病)、ビビッて(失敗過敏症)、もらう人(MNAS)」の学生だけではなく、企業もそれに慣れてしまっているように見えて、もったいないなと思います。

 24卒生の就職活動(企業の採用活動)は、夏に向かい、終盤戦を迎えつつある。民間の調査によれば、就職内定率は過去最高水準で推移――「内定出し」を済ませた採用担当者は、学生からの「内定辞退」を恐れる時期になっている。

光城 学生の「良い理解者」になることで、彼ら彼女らの、企業への向き合い方も変わります。

 彼ら彼女らは想像以上に、細かなことが気になっていたり、まったく別の視点で不安を抱えたりもしています。内定を出した後も当人に寄り添い、さまざまな悩みを聞きながら、一人ひとりの学生が話したいことをしっかり話せる空気感や関係性をつくることが大切です。自分のことがしっかり理解されていると感じれば、内定辞退は減っていくでしょう。

 僕が関わっている学生たちの中にも、内定を受け取った後に「こんなことを聞いていいのかわからない」「どう評価をされているのかが見えない」という声はいつもあります。

 内定を得た後にも別の企業への就活を続けるなかで、考える要素も視点も増えて、いろいろな不安が出てきて、勝手に妄想して、だんだんしんどくなっていく。もちろん、希望にあふれ、「よし、頑張るぞ!」という学生もいますが、そうではない学生もたくさんいます。どんなに「何でも質問してくださいね」とか「気になることがあれば相談してね」と伝えても、それだけでは踏み出せなかったり、隠してしまっていることも、いくらでもあったりします。そういう意味で、できるだけ学生の心理的なハードルを下げること。大変ではありますが、どこまで学生にとっての理解者として映るかは、大きいと思います。

 一方で、まだ、24卒生の内定出しに行き着かず、夏から秋にかけて、採用活動を継続していく企業も多いだろう。規模の小さい企業などは、入社希望者の母集団をつくることに試行錯誤しているかもしれない。

 就職活動に苦労する学生と採用活動がうまくいかない企業――その双方のニーズがマッチし、幸せになる方法を光城さんは次のように提言する。

光城 「うちの会社では、就活病的な就活はしなくても大丈夫だよ」と率直に伝えてみるのはどうでしょうか? 「就活病」特有の強みやスキルの追求をやめて、「あなたならではのことを、当社はじっくり聞きます」という姿勢を見せていく。就活生は、7月8月になると、心身ともにかなり疲れてきます。「就活病」で本心を偽っている自分に悩み始め、行動の熱量も下がるし、不安感が増していく。そんなときに、「就活病的な就活をやらなくていいよ。普通に話をしよう」と言ってあげることで、安心感につなげていけるといいですね。

 人事部などの採用担当者が、前年踏襲といったマニュアル的なものから脱して、これまでの型にちょっとした変化を入れるだけで、出会える学生が増えていくはずです。

 就活病が学生だけの問題だけではなく、企業側にも侵食してしまっていないか、と採用担当者が自らを問い、人事をはじめとした社会人側から、型にはまったやり方を抜け出して、学生たちに社会や仕事の魅力を伝えてあげてほしい。

 学生は意識ひとつで「化ける」ことがあると、僕は考えています。現時点でのスキルや能力だけでなく、過去の経歴や実績だけでなく、就活病を抜け出して変化していく姿を見せられる学生が増えていけばいいな、と願っています。