採用のキーワードは「良い理解者」と「安心感」

 例年、採用活動を行う企業側の悩みとして、「学生の本音がわからない」というものが上位にあがる。多くの就活生のリアルな声を耳にしている光城さんは、いまどきの学生が「職場に希望すること」を次のように明言する。

光城 単純に「安心感」じゃないかと思います。ブラックとかホワイトとか、安定や成長、福利厚生の充実やダイバーシティ推進という話ではなくて、その企業や組織に学生自身が「安心感」を見いだせるどうか、です。それは、必ずしも、企業の「経営の安定」だったり、「制度の充実」から生まれるものではありません。たしかに学生はニュースや就活対策を踏まえて、口ではそう言ってはいます。

 ただ、僕が学生とかかわっていてよく感じるのが、彼ら彼女らは「理解者を求めている」んじゃないかな、ということ。周りの人に自分が理解されていると思ったときに安心感を得て、信用につながるし、それが意欲やエネルギーになる。たとえば、「その視点って新しいよね?」とか、「こう使えば、もっと良くなるやん」というようなアドバイスを受けたり、「当たり前だと思ってるかもしれないけど、そこが良いところだよ」というように、何かの気づきのきっかけがあると、学生は自分の捉え方や動き方が変わったり、自分では意識していなかった特徴を認識できたりして、人や会社や組織への共感性や熱量が上がります。採用側のコミュニケーションスキルが試されるところです。

 企業・団体が行っているインターンシップは、25卒生から4タイプに分類され、「インターンシップ」と銘打つ条件として、参加学生へのフィードバックが企業・団体に義務づけられることになった。社員からのアドバイスで、学生が「安心感」を得られるかどうかは、そのフィードバックの巧拙が左右するのではないか?

* HRオンライン 25卒採用“インターンシップ改革”で、人事担当者が知っておきたいこと 参照

光城 もし、企業側が「型」でやってしまっていたら、当然、学生はそれに合わせることしかできないし、安心して自己開示はできないですよね。

 多くの「MNAS」の学生は、企業からフィードバックを受けることが当たり前だと考えているでしょう。だからこそ、その場合は制度的なフィードバックだけではなく、よりフランクな、定型ではないフィードバックをしたほうが学生に対してのヒット率は上がるんじゃないかとも思います。

 先輩社員や採用担当者が「評価・判断をする」というよりも、インターンシップ参加者の「良い理解者」になっていくこと。多くの学生たちは怖がりで傷つきやすいので、ほとんどの企業側は当たり障りのない対応をするかもしれません。ただ、だからこそインターンシップでも面接でも、もっと彼らの就活病を和らげてあげてほしいんです。

 学生たちも、どのタッチ感で話すのが「正しい」のか、に迷って怖がっています。いわゆる面接っぽい「型」ではなく、「実はこっちも緊張してるんだよ」とか、「もうちょっと大きい声で話してみよう!」くらいに、「評価して選ぶ」立場だけではなく、選考を通して「学生を育てる」くらいのメッセージを込めるくらいのほうがいいかもしれません。

 インターンシップを受ける学生も、面接に臨む学生も千差万別で、一人ひとりに違った個性がある。そうしたうえで、もし、光城さんが面接官なら、学生のどういう素地に注目するだろう。

光城 よく言われる成果や実績、スキルや能力については、僕は「たかが学生の」と思ってしまうんです。当然ながら、社会で求められるものとはレベルが違います。そういう意味で、育てる価値や成長の余白を考えると、その学生の「熱量と素直さ」じゃないかな、と考えています。もうひとつ求めるなら「視点の数」ですね。

 というのも、単純に、そんな学生が稀少だし、活躍する大前提だと考えているからです。

 たとえば車でも、エンジンの出力がないと、どんなにハンドルさばきがうまくても前には進みません。素直さは、異物に対しての許容度の高さにつながります。新しい何かを受け入れる度量があるかないか――「面倒くさい」「しんどい」「信じられない」「ありえない」というふうにネガティブに捉えるのではなく、素直な気持ちで物事に向き合って、視点の数が増えるほど成長の機会になるはずです。