「就業規則」の解説書が社員の理解を深めていく
では、「人が集まる会社」「心を温める会社」にするために、「就業規則」はどのように作ればよいのだろうか。
下田 そもそも、「就業規則」というものを「労基署に提出する規則集」と狭くとらえるのではなく、会社と社員との信頼関係やパートナーシップを構築するための「グランドデザイン」ととらえるべきです。そのためには、「就業規則」に前文を設けて経営理念的な内容を盛り込んだり、「就業規則」とは別に経営者の思いをまとめた冊子を作成したりすることが考えられます。
先日も、ある宿泊業の会社が「就業規則」を改定する際、経営者の思いをまとめた「幸せの手引き」と題する解説書をまとめるお手伝いをしました。
その会社では、新しい「就業規則」で労働時間を原則1日8時間、休日は完全週休2日制の年間105日に見直しました。年間を通して業務に繁閑がある旅館業で完全週休2日制を実施することは容易ではありません。解説書では、そのねらいについて、「社員に最高のパフォーマンスを発揮してもらうために長時間労働を減らして休日を増やしたこと、単に人を増やすのではなく、IT化を進めて人員配置を効率化すること、また、社員には所属部署を超えて応援勤務を要請することもあり、その協力をお願いしたいこと」などを平易な言葉で説明しています。解説書を読んだ社員からは、「新しい『就業規則』のねらいがよく理解できた」という声があがりました。
「就業規則」そのものの作り方にも、多くの工夫の余地があると下田さんは述べる。
下田 社員を巻き込んで作る方法もあります。一般的に、「就業規則」のスタイルは、「我が社の社員はこういうことをしてはいけない」という姿勢ですが、社員のワークショップで、「社員として、自分たちはこういうことを行おう、こういうことはしないようにしよう」というかたちで、「就業規則」の内容をまとめていくのです。法的な観点などは、私たち専門家がフォローし、表現をブラッシュアップしていきます。最終的にできあがったものは他社のものとあまり変わらない場合もありますが、「会社が一方的に決めたのではなく、自分たちで作ったもの」という意識が生まれ、「就業規則」に対する社員の受け止め方が違ってくるのです。