「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれないのです。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】<br />認知症リスクを下げる“最適な血圧”とは?イラスト:chichols

認知症リスクを下げる最適な血圧

【前回】からの続き 久山町研究では、血圧が低くなるほど「脳血管性認知症」のリスクは抑えられています。ポイントは、どのあたりの血圧を目標にすればいいのか、ということです。

しかし、「どのくらいの血圧を保っていれば、認知症は防げるか」という点に関しては、まだ国際的なコンセンサスが得られていないのが実情です。

それでも私は、久山町研究でも正常血圧としていた「収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満」を目指すべきだと考えています。これは、日本高血圧学会による「正常血圧」(もっとも望ましい血圧)と同じです。

病院だと血圧が上がる?

前述のメタボの基準と比べると、やや厳しいと思われるかもしれせん。それでも私は、血圧に関しては、厳しいくらいでちょうどいいと思っています。なぜなら、血圧はつねに変動しているからです。

「白衣高血圧」という言葉をご存じでしょうか? これは、家庭で測る血圧は正常なのに、病院で白衣姿の医者や看護師が測定すると高血圧になるというものです。

患者さんにとって、病院は多少なりとも緊張を強いられる場所です。医者や看護師の前に座るだけで緊張するという人も少なくありません。

緊張すると血管を縮めて、血圧を上げる交感神経が優位になり、血圧が上がってしまうのです。一説には、血圧が高めの人の5分の1から3分の1に、白衣高血圧が疑われるそうです。

できるだけ低く抑えたほうが無難

白衣高血圧でなくても、何気ない軽い「興奮」も血圧を上げます。

テレビで相撲やプロ野球、Jリーグなどを観戦していると、興奮してハラハラドキドキすることがあるでしょう。こうしたときにも交感神経のスイッチが入り、血圧が上がっている可能性があります。ちょっとした夫婦げんかの興奮も、血圧を上げるでしょう。

このように状況によって血圧が変動するということを踏まえるなら、できるだけ低く抑えておいたほうが無難なのです。

目指すべき血圧の値を再確認

仮に、メタボ基準にひっかからない収縮期血圧130mmHg未満かつ/または拡張期血圧85mmHg未満をクリアしていたとしても、緊張や興奮で収縮期血圧が150mmHgを超えたり、拡張期血圧が90mmHgを超えたりすることも容易に考えられます。

血圧が変動するたびに、血管は縮んだり緩んだりします。ホースを何度も踏んづけているとボロボロになるように、血圧の変動で血管が縮んだり緩んだりしてストレスが加わると、動脈硬化のリスクも高まります。

ですから、血圧コントロールでは、収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満を目指すようにしたほうがいいでしょう。【次回へ続く】

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。