「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれないのです。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】<br />脳が衰える日本人にとって深刻な2つの「国民病」イラスト:chichols

“メタボ”をなめてはいけない

【前回】からの続き 動脈硬化を起こす前段階と考えられているのが、「メタボリックシンドローム」です。“メタボ”という略称で広く知られていますね。

メタボは、お腹がせり出すほど内臓脂肪がたまった「内臓脂肪型肥満」になって、さらに「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」のうち、2つ以上を併発している状態です。

内臓脂肪型肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症は、それぞれ単独でも動脈硬化のリスクを高めますし、それらが重なると、危険度は何倍にも跳ね上がることが知られています。

“メタボ”の診断基準とは?

メタボの診断基準は、次のようになっています。以下の「収縮期血圧」とは、心臓がドクンと収縮して血液を送り出したときの血圧で、「最高血圧」(上の血圧)のこと。「拡張期血圧」は、心臓が拡張して血液を受け入れているときの血圧で、「最低血圧」(下の血圧)のことです。

メタボリックシンドロームの診断基準
内臓脂肪型肥満 腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上
血圧 収縮期血圧130mmHg以上かつ・または拡張期血圧85mmHg以上かつ・また高血圧の薬を飲んでいる
血糖 空腹時血糖値110mg/dl以上かつ・また糖尿病の薬を飲んでいる
血中脂質 中性脂肪値150mg/dl以上かつ・またはHDL(善玉コレステロール)40mg/dl未満かつ・または脂質異常症の薬を飲んでいる
【91歳の医師が明かす】<br />脳が衰える日本人にとって深刻な2つの「国民病」

日本人にとって深刻な「国民病」

なかでも認知症を引き起こす動脈硬化の2大危険因子は、「高血圧」「糖尿病」だと私は思っています。

高血圧の患者さんは、全国で推計4300万人。日本の総人口は約1億2000万人ですから、3人に1人が高血圧を抱えている計算になります。

一方、糖尿病の患者さんは、その予備群を入れると約2000万人にのぼると推計されています。6人に1人が糖尿病という計算が成り立ちます。

どちらも日本人にとって深刻な「国民病」であり、それが新たな国民病となりつつある認知症のリスクを高めるのです。【次回へ続く】

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。