「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれないのです。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
糖尿病ではなく「高血糖病」
【前回】からの続き 「高血圧=血圧が高くなる病気」ですが、「糖尿病=尿に糖が出る病気」ではありません。
糖尿病が進むと尿にも糖が出るようになりますが、糖尿病の本質は、血糖値が高くなりすぎて、下がりにくくなることです。
認知症は本来、「認知機能不全症」といい換えるべきだと私は思っていますが、同じように糖尿病は「高血糖病」といい換えるべきでしょう。
「1型」「2型」で
糖尿病はどう違う?
日本人の糖尿病の95%以上は、食事や運動といった生活習慣の乱れによって起こるもので、これを「2型糖尿病」といいます。
2型があるということは、1型もあります(3型以降はありません)。「1型糖尿病」は、生活習慣ではなく、遺伝的な体質やウイルス感染によるものです。
1型糖尿病の発症を避けることはできませんが、糖尿病の95%以上を占める2型糖尿病は生活習慣の改善によって避けられます。
血糖値を下げる
人体唯一のホルモン
2型糖尿病の背景にも遺伝的な体質は絡んでいますが、生活習慣の工夫で発症を避けたり、発症しても身体へのダメージを最小限に抑えたりすることは可能なのです。
糖尿病発症と深く関わるのは、胃の後ろにある「すい臓」でつくられる「インスリン」というホルモンです。インスリンは上がった血糖値を下げてくれる人体で唯一のホルモンです。
体内には100種類以上のホルモンと、それに似た性質のものが見つかっていますが、人体で血糖値を下げられるホルモンは、インスリンただ1つだけなのです。
血糖値を上げるホルモン
逆に血糖値を上げるホルモンには、同じすい臓でつくられる「グルカゴン」、「成長ホルモン」「コルチゾール」「カテコールアミン」など数多くあります。
1型糖尿病では、すい臓でインスリンをつくる「β (ベータ)細胞」が、自己免疫疾患などでダメージを受けて、必要なインスリンをつくれなくなります。それにより、血糖値が下げられなくなるのです。
このため、1型糖尿病の患者さんは、糖質を含む食事をするタイミングなどにインスリンを自ら注射して血糖値を下げます。
「インスリン抵抗性」とは?
2型糖尿病では、インスリンの分泌量が足りなかったり、分泌されるタイミングが遅れたり、血糖値を下げる効き目が落ちたりして(これを「インスリン抵抗性」と呼びます)、インスリン作用が不十分になった結果、血糖値が高くなり、下げられなくなります。
本書でとり上げる糖尿病は、この2型糖尿病のほうです。以降、本書で「糖尿病」というときには、特段の断りがない限り、2型糖尿病を指しています。【次回へ続く】
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。