「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれないのです。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】認知症の発症リスクが倍増する恐ろしい病気とは?イラスト:chichols

糖尿病と認知症リスク

さて、ここから【前回】触れた久山町研究の貴重なデータを引用しましょう。

久山町研究では、糖尿病を評価する指針である「耐糖能レベル」を用いて、「正常耐糖能」「空腹時血糖異常(IFG)」「耐糖能異常(IGT)」「糖尿病」という4つのカテゴリーから認知症リスクを検討しています。

空腹時血糖異常と耐糖能異常を合わせて「境界型糖尿病」(糖尿病予備群)と呼びます。耐糖能というのは、血糖値を正常範囲に保つため、血糖を処理して血糖値をコントロールする能力のことです。

4つの耐糖能レベル

耐糖能レベルは、空腹時に75gのブドウ糖入りの飲み物を飲み、血糖値の変化を調べる「75g経口糖負荷試験」(75gOGTT)の結果により、次のように分類されます。

4つの耐糖能レベル
正常耐糖能 空腹時血糖値110mg/dl未満かつ負荷試験2時間後値が140mg/dl未満
空腹時血糖異常(IFG) 空腹時の血糖値がやや高い
耐糖能異常(IGT) 負荷試験2時間後の血糖値がやや高い
糖尿病 空腹時血糖値126mg/dl以上あるいは負荷試験2時間後値が200mg/dl以上

対象となったのは、1988年の健診で75g経口糖負荷試験を受け、認知症のない60歳以上の住民1017人で、追跡期間は15年間です。

その結果、「正常耐糖能 < 空腹時血糖異常 < 耐糖能異常 < 糖尿病」という順番に、脳血管性認知症の発症リスクが高まっていました。

糖尿病だと認知症の
発症リスクが倍増

正常耐糖能と比べると、糖尿病だと脳血管性認知症の発症リスクは1.8倍も高くなっていました。

【91歳の医師が明かす】認知症の発症リスクが倍増する恐ろしい病気とは?

さらに、アルツハイマー型認知症に関しても、耐糖能異常と糖尿病は正常耐糖能と比べて発症リスクが高くなっていました。

糖尿病だとアルツハイマー型認知症の発症リスクは正常耐糖能の2.1倍でした。【次回へ続く】

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。