東京都目黒区の自宅で母親の自殺を手助けしたとして、警視庁捜査1課は6月27日、自殺幇(ほう)助の疑いで、歌舞伎役者・市川猿之助(本名・喜熨斗孝彦=きのし・たかひこ)容疑者(47)を逮捕した。喜熨斗容疑者は一家心中を図ろうとした疑いがあり、警視庁は今後、父親の死亡にも関与したとみて引き続き調べる。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

週刊誌報道を受けた
家族会議で一家心中

市川猿之助容疑者(2014年1月2日撮影)市川猿之助容疑者(2014年1月2日撮影) Photo:Sports Nippon/gettyimages

 逮捕容疑は5月17日午後から18日午前の間、睡眠薬を渡して母親の延子さん(当時75)の自殺を手助けした疑い。喜熨斗容疑者は「両親の自殺を手助けしたことに間違いはない。私も後を追うつもりだった」と容疑を認めているという。

 全国紙社会部デスクによると、喜熨斗容疑者は6月27日午前、入院していた東京都世田谷区の病院を退院。任意同行を求められ、逃亡や証拠隠滅、再び自殺を図る恐れがあるなどとして目黒署で逮捕された。

 この事件を巡っては5月18日午前10時15分頃、喜熨斗容疑者のマネジャーが延子さんと歌舞伎役者の市川段四郎(本名・喜熨斗弘之)さん(当時76)を2階リビングで、喜熨斗容疑者を半地下のクローゼットで倒れているのを発見し119番。両親はその後、死亡が確認された。喜熨斗容疑者は病院に搬送されたが、意識が朦朧(もうろう)とした状態だった。

 喜熨斗容疑者は警視庁の複数回の聴取に対し「週刊誌報道を受けて前日に家族会議を開き、死んで生まれ変わろうと話した」と容疑を認めていた。睡眠薬は過去に喜熨斗容疑者が処方されていたものとみられる。

 家族会議があったとされる17日は、女性セブンが喜熨斗容疑者側にパワハラやセクハラ疑惑の記事内容を伝えたタイミングだった。

 両親の死因は司法解剖で薬物中毒と判明。喜熨斗容疑者も搬送時、薬物中毒が疑われる症状だった。喜熨斗容疑者は「両親にビニール袋をかぶせた」「睡眠薬の容器は捨てた」などと供述しているという。

 喜熨斗容疑者は2012年、「スーパー歌舞伎」で注目された伯父・市川猿翁さんの後を継ぎ四代目市川猿之助を襲名。人気漫画を原作とした「スーパー歌舞伎2(セカンド) ワンピース」で豪快な立ち回りや迫力満点の宙乗りで人気を博した。同じく人気漫画「鬼滅(きめつ)の刃」をベースにしたスーパー歌舞伎を24年から上演する予定だった。

 NHK大河ドラマ「風林火山」では武田晴信(のちの信玄)役を演じ、ほかにも「半沢直樹」など多数のテレビドラマにも出演した。今月から公開する予定だった映画「緊急取調室 THE FINAL」にも出演していたが、配給先が延期を発表していた。