「バカンスの1カ月のために残りの11カ月を働く」
白河 ちょっと別の角度から長期休暇のメリットを考えてみましょうか。フランスにおけるバカンスの経済効果はすさまじいですね。
高崎 調査によると、フランスの1世帯の夏のバカンス平均予算は約1400~1800ユーロとのこと。日本円でざっくりと20万~25万円くらいでしょうか。これはフランスのサラリーマン賃金の中央値などを鑑みると、月収1カ月分弱に当たる金額です。
フランス人は、「バカンスの1カ月のために残りの11カ月を働く」ともいわれていて、11カ月でコツコツ貯金している方が多数です。数千万人が平均20万円近くの予算を観光につぎ込む期間が毎年必ずくる。この経済効果は国の一大事といえます。
白河 観光地での雇用も創出しますしね。国も移動を推奨し、バカンス中の移動のために鉄道の運賃を安くするなど、国を挙げてバックアップもある。平均予算のデータを見て、国中のバカンスでどれだけの経済効果があるのだろうと感心するとともに、家族で1カ月移動して遊ぶ交通費と宿泊費にしては思ったよりも安いと感じました。
その背景には、「バカンス用宿泊施設」のような仕組みがあるんですね。比較的安価で過ごすことができて、3食自炊で予算を抑える、逆に食事は提供されて自由時間が増える、子どもが過ごすエリアやスポーツ設備などもあるなど、バリエーションが豊富で家庭に合う施設を選べる。こういう場所が日本にも増えるといいですよね。
高崎 そう、フランス人はもちろんご家庭によりますが、基本は車で移動し、親戚や親の家に宿泊したり、キャンプや海、バカンス村で滞在費が膨らまないように工夫します。こういった動きはフランスの交通観点セクターにも大きな恩恵をもたらしますし、ツーリズムの季節労働雇用を生み出します。社会全体で見たときに、大いなる恩恵があるのがバカンスなんです。