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石油元売り大手3社の2026年3月期中間決算では、2社の純利益が減益となった。原油価格の下落が業界全体に影響を与えたためだが、在庫影響を除くと独り負けとなる会社がはっきりと浮かび上がった。エネルギー業界ではカーボンニュートラル実現の一里塚として30年度までの目標を各社が掲げ、事業構造の転換を急いでいる。それぞれの経営方針が業績に表れ始めている一方で、脱炭素の揺り戻しや電力需要の上昇でカーボンニュートラルに向けたロードマップが揺れ動いている。『利上昇、トランプ関税、人手不足で明暗 半期決算「勝ち組&負け組」【2025秋】』の本稿では、30年度まで残り5年を切り、各々が分かれ道を歩み始めているさまを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 鈴木文也)
続く原油価格の下落
業界に向かい風
石油元売り業界の2026年3月期中間決算は、資源価格の変動が業績へと直結する結果となった。まずは大手3社の業績を比較してみよう。
業界最大手のENEOSホールディングス(HD)の26年3月期中間決算(国際会計基準)は、売上高が前年同期比5.3%減の5兆6919億円となった。海運事業の売却によって営業利益は前年から増加したものの、純利益は前年から5%減の647億円となっている。
次いで、2番手の出光興産はというと、売上高は前年同期から15.5%減少し、3兆8057億円にとどまっている。さらに、営業利益は同73.4%減の258億円、純利益も同63.7%減の360億円と大幅な減収減益の決算となった。
一方、3番手のコスモエネルギーHDの売上高は前年同期比1.0%増の1兆3337億円となり、営業利益、純利益共に増益となっている。
3社に共通して影響を与えたのは原油価格の下落だ。原油価格はロシアのウクライナ侵攻の際に急騰したが以降は下落に転じ、トランプ政権の誕生やOPEC(石油輸出国機構)プラスの増産の影響などで今年に入っても低下基調は継続している。事実、原油価格の代表的指標となるWTI原油先物価格は24年10月が1バレル71.6ドルだったが、25年10月は60.17ドルとなりわずか1年で下落した。
石油元売り会社は石油備蓄法により70日間分の石油の備蓄が義務付けられている。原油価格低下局面では、価格が高いときに仕入れた原油の影響で在庫評価が上がり、売上原価が高くなり利益が圧迫される。このため石油元売り会社の業績は在庫の価格変動に大きく影響される。
そこで、在庫影響を除いた3社の業績を見ると、業界の姿は一変する。
次ページでは、3社中1社のみが苦しむもう一つの資源価格の下落理由と、業績回復への分岐点を示していく。







