ビタミンD3が「がん死」を抑制する?サプリの臨床試験が進行中Photo:PIXTA

 日差しが眩しい季節だ。紫外線の害が強調されるが、健康に欠かせないビタミンDの生成には日光浴が必須である。

 東京慈恵会医科大学分子疫学研究部の浦島充佳教授らは、ビタミンDの効能・効果に関する研究を続けている。そのうちの一つ「アマテラス試験」は、2010~18年に行われた。

 食道から直腸までの消化器がん患者417人(平均年齢66歳、男性66%、がんのステージはI~III)を、術後にビタミンD3のサプリメント(VDサプリ)を1日2000IU、毎日服用する群と、プラセボ群に分け、再発せずに生存している期間を比較したもの。

 VDサプリの内服を始めてから1年半までは、両群での再発率、死亡率にはほとんど差は生じなかったが、1年半を過ぎた頃からじわじわと差が出始める。

 そこで内服開始後1年未満の期間を含めずに解析した結果、VDサプリ群の5年生存率は85.8%、プラセボ群は76.4%と、VDサプリが有意に再発・死亡リスクを抑制することが示されたのだ。

 さらに、ゲノムの守護神とも呼ばれるがん抑制遺伝子「p53」に変異が生じている患者に絞り解析すると、VDサプリ群の無再発5年生存率は88%、プラセボ群は同62%と、VDサプリが再発・死亡リスクをおよそ3分の1に抑えたことがわかった。

 また、VDサプリとがんに関する複数の研究を横断的に解析した国際研究からは、VDサプリを毎日服用することで、がん種に関係なく死亡率が12%減少し、特に高齢者では、より抑制効果を期待できることが示されている。

 浦島教授らのグループは現在、p53遺伝子変異があるがん患者に絞り、再びVDサプリ毎日服用群とプラセボ群の再発・死亡リスクを比較する臨床試験を進めている。今回は消化器がんのほか、肺がんや乳がん、膵臓がん、頭頸部がんなども対象だ。

 さて、一連の結果のみからVDサプリに過剰な期待をかけることは禁物だが、晴れた日に外に出かけ、日光を浴びても損はない。日焼け止めをうまく使いながら陽光を楽しもう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)