年々生産量が減る北海道の昆布。昆布の未来を見据え、これらの産地の課題に寄り添うため、「生昆布」を使った商品を開発した。昆布漁の負担を大幅に軽減する、この新たな取り組みについてフジッコ株式会社執行役員で昆布事業部長の紀井孝之氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)

生産者の負担を
大幅に減らす生昆布

フジッコが商品化した「おやさい生昆布」フジッコが商品化した「おやさい生昆布」(写真提供:フジッコ)

 国内の昆布生産量のおよそ9割を占める北海道。食卓に欠かせない昆布だが、北海道における昆布業者は減少傾向にある。北海道漁連協同組合連合会によれば、10年前比で約79%に減少しているという。さらに、北海道の統計によれば、昆布の生産量も1989年には約3万3000トンだったが、2022年は約1万900トンと約7割も減っている。

 その原因は地球温暖化などの海洋環境の変化による生育不良、そして生産者の高齢化、重労働に起因する後継者不足などである。

「ふじっ子煮」などの主力商品により、355億円の昆布佃煮市場のうち50%以上のシェアを誇る1960年創業のフジッコにとって、このような北海道の現状は由々しき事態であり、同社は昆布生産の改善の取り組みを始めた。

「弊社はとろろ昆布から事業が始まり、現在でも売り上げ構成の全体に占める昆布製品の割合は約3割です。昨今の昆布生産の現状を鑑み、消費者のためだけの商品作りではなく、昆布のリーディングカンパニーとして生産者に寄り添った商品を作る必要があると感じていました」(紀井氏、以下同)

 そこで同社は、約3年ほど前から昆布漁の負担減につながる「生昆布」の取り組みを考え始めた。

 昆布漁は水揚げ後、長く重い昆布を浜に1枚ずつ並べ、自然乾燥させるのが通常である。これが生産者にとって重労働なのである。生昆布はこの乾燥工程をカットするものだ。

「水分を含んで重い昆布を乾燥させる作業は最低でも半日かかるそうです。この工程をカットするため、水揚げ後は乾燥させずにすぐに洗浄、工場で切断し、冷凍貯蔵して加工するという取り組みを始めました」

 まだ、北海道の中でも数か所のみという取り組みだが、現場の漁師からは「取って生のまま出荷できるのは昔からの理想」というような声もあるという。