長年の習慣を壊す
生昆布への挑戦
しかし、そもそもなぜ昆布は乾燥させるのだろうか。そこには古くからの商習慣があるのだそう。
「昔から広い北海道から全国へ流通させるためには、乾燥させた昆布が適していたんです。我々もメインは乾燥昆布を使用しており、それに比べて生昆布の割合は数パーセント。生昆布事業はいわばテスト段階です。これからもっと賛同者を募っていきたいですし、世の中にも情報発信していきたいです。今回、ご協力して頂いた道漁連さんや昆布漁師さんには感謝しております。将来的に、『フジッコの生昆布の取り組みがあってよかった』と思ってもらえたらうれしいです」
一方、フジッコ社内でも生昆布の実現には紆余(うよ)曲折があった。
「まったく新しいスキームを作ることになるので、コスト面がハードルでした。冷凍という手法を使っていますが、我々は冷凍食品メーカーではないので、冷凍庫を新たに準備しなければなりません。保管にもコストがかかりますし、正直採算は合っておりません。また、乾燥昆布と違い解凍する工程も追加され、これまでと違う新たな製造工程や設備が必要となったからです」
それでも、生昆布の実現に踏み切ったのは、冒頭で述べたリーディングカンパニーとしての矜持(きょうじ)と将来的な事業の継続性を考えてのことだった。
「採算とは別に、やはり我々は生産者に寄り添った商品を作ろうと改めて思いました。このような取り組みをしないと、今後の昆布事業の繁栄や継続も見込めないですからね。フジッコは昆布メーカーとしては国内ナンバーワンなので、我々がやらなければいけないという大義も感じていました」
こうして生昆布は実現したのだ。