暖かい海でも育つ昆布の育種
「ブルーカーボン」としての昆布

 生昆布を加工し、商品化することがフジッコにとっての商売だ。昨年9月、フジッコは生昆布と3種類の野菜を使った「ふじっ子煮 おやさい昆布」を発売。その後、挑戦の意味を込めた「ふじっ子煮MIRAI」シリーズにリニューアル。パッケージデザインも黄緑色に変え、今年3月から発売を開始した。

「現在は『おやさい生昆布』『梅入り生昆布』の2種類を発売しています。生昆布は乾燥昆布と違って、ハリツヤがあって、食感も弾力があります。乾燥昆布を使用したふじっ子煮シリーズと食べ比べていただくと、その違いは感じられると思いますね。ただ、やはり乾燥昆布と生昆布では味の染み方が異なるので、開発者は生昆布の特徴を最大限に生かした味付けにするために苦労していました。他にも昆布は7月~9月と収穫時期が決まっているため、収穫量と年間の出荷数の調整が難しいです。『今年は何百トン収穫しよう』と決めても、やはり自然相手ですから、目標に達しないこともあります。さらに生昆布は売れなければ冷凍の保管料がかさみますし、売れすぎても在庫がなくなってしまう。在庫コントロールも非常に難しいですね」

 ただ、今年発売されたばかりの生昆布シリーズは初動も好調で、おおむね予測通りであるという。まだまだ、始まったばかりという生昆布プロジェクトだが、フジッコは今後どのような展開を見込んでいるのか。

「生昆布の生産を拡大するのはもちろんのこと、他にも昆布関連の事業を考えています。昆布は光合成の際に二酸化炭素を吸収するブルーカーボンとしても期待されていますが、暖かい海では育ちにくいです。そこで、我々は一部の大学とともに暖かい海でも育つ昆布の品種改良を検討しています。そして、昆布の生産量を増やし日本各地や世界に昆布を広めていきたいと考えています」

 フジッコの取り組みは、昆布以外の漁業、農業の改革にも参考になる事例だろう。今後の広がりに期待したい。