やってはいけない!相続&生前贈与#13Photo:PIXTA

相続税を「払い過ぎて」いるケースは少なくない。そして、税務署はそのことを教えてくれない。特集『やってはいけない!相続&生前贈与』(全16回)の#13では、過払い相続税を取り戻した三つの事例から、土地の相続で損をしないテクニックを相続税が専門である岡野相続税理士法人の岡野雄志代表社員に指南してもらった。

「週刊ダイヤモンド」2023年7月15日・22日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

相続税払い過ぎは「10件中8件」で見つかる!?
税務署は“税金の払い過ぎ”を指摘しない

「税金のことは、プロである税理士に任せておけば大丈夫」――。

 そう思いがちだが、実は、相続税の額は税理士によって大きく変わる。われわれの税理士法人は相続税の払い過ぎがないか、他の税理士が作成した相続税申告書の見直しを行っているが、10件中8件の割合で相続税の払い過ぎが見つかる。

 なぜ依頼する税理士によって相続税の額が変わってしまうのか。

 あまり知られていないが、医者の専門分野が内科や眼科、皮膚科などに分かれているように、税理士にも専門の得意分野がある。

 税理士の専門分野は大きく二つに分かれ、法人税や所得税といった会計専門の税理士と、相続税を専門とする税理士がいる。前者は会計業務がメインとなるため、不動産の知識が浅く、適正な土地評価を行うことは難しい。

 つまり、相続財産に「土地」が含まれる場合、実際の価値よりも高く土地を評価してしまい、結果的に相続税を払い過ぎてしまうことがあるのだ。

 国税庁によると、亡くなった方から受け継いだ相続財産に占める土地の構成比は約33%(2021年分)と高いため、土地の適正な評価が相続税額を左右する。

 大切な家族が亡くなると、葬儀をはじめ、いろいろな手続きに忙殺されてしまう。忙しさから、普段から法人税や所得税でお世話になっている税理士や、紹介された相続税にあまり詳しくない税理士に頼ることも多い。これは相続税の払い過ぎの第一歩かもしれない。

 税務署は“税金の払い過ぎ”を指摘しないので、本人も相続税の払い過ぎに気付かないことがほとんどだ。しかし、「相続開始(被相続人の死亡)から5年10カ月の期間内」ならば、払い過ぎた相続税を取り戻せる可能性がある。

 今回は、相続税の払い過ぎが判明し、相続税が戻ってきた事例を三つ紹介しよう。