生前贈与は相続税を節税する有効な手段の一つだ。今しか使えないお得な「一括贈与」の三つの特例もある。特集『やってはいけない!相続&生前贈与』(全16回)の#7では、贈与の基本をおさらいするとともに、「三大一括贈与」について解説する。制度の基本的な仕組みを知り、しっかり活用しよう。
最大1500万円のお得な非課税枠も
三大「一括贈与」を使いこなす
相続税対策の最も有効な手法は生前贈与にあり――。そんな格言の通り、相続税をうまく節税するためには、生前の贈与を活用していくことが不可欠だ。そして、そのためには、相続税だけでなく、贈与税の仕組みについても知っておく必要がある。
そもそも「贈与税」とは、相続による不公平を防ぐための仕組みだ。被相続人が生前に配偶者や子供たちに財産を分け与えておくと、相続財産が減り、相続時に相続税の負担を軽減できる。生前贈与の有無で税負担に大きな差が生まれるので、その格差を埋めるのが贈与税の役割だ。
そのため、贈与税は相続税に比べると、基礎控除額がかなり低く抑えられているだけでなく、税の累進性の勾配もきつくなっている。ある意味、相続税より“重い”税金といえるだろう。
だが、贈与税には1月から12月の1年間に行われた贈与(暦年贈与)に対し、贈与を受ける人(受贈者)1人当たり110万円までの基礎控除がある。この枠内であれば、その年の贈与税はタダになるということだ。
贈与金額が110万円を超えた場合は、課税価格から110万円の基礎控除を差し引いた額に贈与税の税率を掛け、さらに控除額を除くことで贈与税が算出できる(表参照)。
18歳以上の人が直系尊属(父母・祖父母・曽祖父母)から贈与を受けた場合は、通常の贈与よりも低い税率が適用される。
暦年贈与の活用は相続税対策の王道中の王道だ。110万円の基礎控除のフル活用はもちろん、条件によっては、多少贈与税を支払っても生前に贈与を進めた方が相続税と合わせたトータルの税額が低くなる場合もある。
なお、勘違いされやすいが、贈与税は贈与した側(贈与者)ではなく、もらった側が支払うものだ。仮に贈与者が贈与税も肩代わりするのであれば、その分も贈与税の対象となるので気を付けたいポイントだ。
また、いわゆる「名義預金」のように、贈与したと言いつつ振り込んだ先の口座などを贈与者自身が管理している場合、贈与とは見なされない点も“落とし穴”といえるだろう。
実は贈与には、国が用意した優遇制度が幾つか存在する。暦年贈与に加えて、これらの贈与の特例を使いこなすことが、節税に向けた一歩となる。
次ページでは、その優遇制度である3つの「一括贈与の特例」を紹介しよう。さらには、それらの制度を使うに当たって注意すべき点や、特例の期限、今後の見込みについて解説する。