創業者精神に基づき、リゾート事業撤退
「商品は3年後には墓場へやれ」

 創業者精神の継承者を樋口から引き継いだのが、現社長の芳井敬一だ。芳井は創業者の石橋が63年に社員向けにまとめた冊子『わが社の行き方』を熟読するよう、事あるごとに社員に訴える。

 その芳井は、逆説的ではあるが、創業者精神に基づき、創業者が手掛けたビジネスでもちゅうちょなく撤退している。大和ハウスは22年12月、石橋が進出を決めたリゾート事業を担う大和リゾート(73年創業)を恵比寿リゾートに556億円で売却したのだ。

 創業者石橋は『わが社の行き方』で、「商品は3年後には墓場へやれ」と呼び掛けている。

 往々にして、創業者が手掛けた事業に執着する企業は少なくない。それでも芳井は、創業者石橋が手塩にかけたリゾート事業を切り離す大胆な経営判断に踏み切った。これも、大和ハウスの強みかもしれない。

 大和ハウスの社是の1番目は「事業を通じて人を育てること」。創業者イズムの継承を通じて、大和ハウスの「最強経営者」が育まれている。

(敬称略)

参考文献:石橋信夫著『わが社の行き方』(大和ハウス工業)、野口均著『逆境のリーダー・石橋信夫』(ダイヤモンド社)、樋口武男著『熱湯経営』(文藝春秋)、『大和ハウス工業の60年』(大和ハウス工業)

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata