法廷闘争は「正しい」からといってむやみにやるべきではない

 このように「ブーメラン」のリスクがあるから、企業危機管理のプロは法廷闘争に慎重なのだ。例えば、週刊誌が企業のスキャンダルを報じた時、経営者や顧問弁護士は、すぐに「訴える」と言い出す。深刻な名誉毀損であり、売り上げなどにも悪影響だし、株主を納得させるためにもとにかく訴訟すべきだ、という。教科書的には確かにそれが正しい。

 しかし、我々、企業危機管理の担当者としては、その動きを止める。文春や新潮を相手に訴訟をするリスクを理解しているからだ。訴えたことで、どんな「追撃」がされるか、どんなメディアが後追いするか、どんな過去の話が掘り返されて、二次被害を生むかを慎重に判断して、危ないなら訴訟以外の解決策を模索する。内容証明郵便を送ったり、「法的措置を検討します」とリリースを出しながら、ステークホルダーや世論の動向を見ながら、週刊誌と駆け引きをしていく。

「ペロペロ少年へ6700万円の損害請求」も基本的には同じだ。

 法的にも株主対策的にも、これをきっちりやるのは正しいことだ。ただ、危機管理は「正しい」ことだけをやればいい、という単純なものでもないのだ。

 今回のスシローの「和解」は、そんな危機管理の現実をよく理解したということではないのか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)