ホテルの新・覇者#17Photo by Kazutoshi Sumitomo

アパグループは4月に突然の代替わりを迎え、創業者の長男である元谷一志社長兼CEO(最高経営責任者)率いる新体制がスタートした。特集『ホテルの新・覇者』(全18回)の#17では、新社長が先代の野望である「寡占化」に対する胸の内、さらには具体的な戦略を克明に語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大根田康介)

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「寡占化一番乗り」
代替わりしても目指すのか?

――コロナ禍でビジネスホテル市場が厳しい中、アパグループは黒字を維持しました。なぜ維持できたのですか。

 2020年11月期の経常利益は約10億円で、50年連続の黒字。これはグループ会社のマンションを1棟売りしたことが寄与しました。21年11月期は約75億円で、新型コロナウイルスの感染拡大前の19年11月期の約335億円と比べれば4分の1以下ですが、それでも売却利益などに頼らず黒字を達成できた点は評価したいと思います。

 それまではホワイトカラー層中心の顧客層でしたが、コロナ禍でほとんど来られなくなった。そこでゾーニングを変えて宿泊客を獲得してきました。20年6月に「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン アパ直限定素泊まり2500円プラン」を実施し、稼働率は同年4月の約30%から、6月には約72%まで増えました。

 2500円だと利益水準としてはかつかつでしたが、「そんなに安いなら泊まってみよう」という層の需要を総取りした。特にブルーカラー層からは一定の需要がありました。工事の仕事などでの宿泊で、都市圏よりも地方での需要が根強かった。

 時代に合わせて、今まで狙ってこなかった客層にターゲットを変えたからこそ稼働率が上がり、何とか利益を捻出できたのです。

――元谷外志雄会長はかねて、「寡占化一番乗りを目指す」と発言してきました。シェア10%を超えるホテル会社はないので、まずは10%まで伸ばし、さらに20%以上にしていくということでした。代替わりした今、これを目指しますか。