ホテルの新・覇者#16Photo by Masataka Tsuchimoto

ホテル不況のさなか、ウエディング業界大手のテイクアンドギヴ・ニーズが独創性の高い「ブティックホテル」の大量開業計画を打ち出した。世界の潮流として、「ブティックホテルのオリジナリティーは、大手ホテルグループのラインアップとの差別化にもなっている」と不動産サービス大手ジョーンズ ラング ラサール(JLL)の辻川高寛・ホテルズ&ホスピタリティ事業部長。確かにチャンスのある市場だが、新参者らしからぬ“自信”、そして“カネ”はどこから来るのか。特集『ホテルの新・覇者』(全18回)の#16では、野尻佳孝会長を直撃して疑問をぶつけた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

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ホテルの市場に
GAFAが入ってくる危機感

――海外富裕層をターゲットに、独創性の高い「ブティックホテル」を大量に開業します。外資大手ホテル勢もこの市場に手を打っている。結局厳しい競争を強いられるのでは?

 2000年代に入ってラグジュアリーの多様化が進みました。それまではエコノミーからラグジュアリーまで価格で縦のラインに分けられて「高価格=ラグジュアリー」だったのが、多様化により横軸ができた。デザイナーズホテルがそのはしりですね。ブティックホテルは唯一無二を提供するのが特性で、マニュアル型のマネジメントを行うチェーンホテルの真逆です。

 チェーンホテルもブティックホテルに挑戦はしています。新富裕層を奪われちゃいましたからね。IT長者などの新富裕層は、Tシャツにデニムとスニーカーでしょ。トラディショナルラグジュアリーのホテルでは白い目で見られて居心地が悪い。

 そこでチェーンホテルは「W」とか「エディション」とか「アンダーズ」とかライフスタイルホテルのカテゴリーをラインアップするようになった。ブティックホテルの「キンプトン」が買われたように、大手は買収も積極的にやっています。

――外資大手は巨大な会員組織を持ち、送客する力が強い。だから日本のホテルオーナーも彼らに運営を委託しています。国内ホテル関係者からは、新参者に近いテイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&Gニーズ)が客室数の多いホテルをどんどん造ったところで海外富裕層を集客できるのか、疑問視する声も上がっています。

 そういうことをおっしゃる方には、集客ノウハウをお持ちなのかどうかを逆に聞いてみたい。日本のホテル会社が海外マーケティング手法を持ち合わせていないから、外資系に運営委託されるのですよね。基本OTA(オンライン・トラベル・エージェント)に頼り切っているホテルに心配されるのはちょっと意味が分からないです。

 それとね、そうしたホテルは危機感を持たないとけない。GAFA(米国のグーグル、アップル、旧フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)が入ってくるということに。

――GAFAがホテルに参入するんですか。