大切なのは、“面白がる視点”を常に持つこと
八住さんが講師を務める研修のひとつに「アイデア創発」というテーマがあるが……。
八住 「アイデア創発」は、一般的なテクニックを伝えても、なかなか頭に入らないものです。私は、アイデア創発の一例としてもPOP制作の方法を紹介しています。皆さん、最初は、「POPなんて作れない!」と言うのですが、例えば、「商品の紹介文は“接続詞から考える”とよいですよ」とヒントを与えます。例えば、500円のビニール傘にPOPをつける場合は、「(だから)面白くない傘を入荷しました」「(そういえば)日本でいちばん売れている傘です」といったふうに。POPを考えることでアイデアの創発がなされていくのです。
研修では、グループワークやディスカッションも重要ですね。一人で考えていたら出てこないようなアイデアも、受講者同士で対話をしていると、何らかのヒントが生まれるものです。
また、「アイデア創発」の研修に限らず、私の研修は「伏線による腹落ち感」を大切にしています。研修プログラムの中でいくつかの伏線を張り、それが最後に一本の線でつながると、受講者は「なるほど!」と腹落ちするのです。研修自体にひとつのストーリーを持つようにしています。
「(アイデアによる)面白い花を咲かせるには、然るべきタネが必要。そのためには、“面白がる視点”を常に持つこと」と、八住さんは語る。
八住 アイデアは、自分の中にある知識やノウハウが組み合わさって出てくるものです。知識が少ない状態では、どんなにアイデアを出そうとしても、雑巾から水を絞り出すようなもの。だからこそ、日頃からいろいろなものに興味を持って、さまざまなものを見て、みずみずしく考える癖をつけるとよいと思います。
私は街なかの風景や看板をよく気にするのですが、自分の目で見たものが頭の中に暗黙知的に蓄積され、見た瞬間は分からなくても、ある時、「あの時のあれはこういうことだったんだ!」と気づくことがあります。仕事における課題解決でも、一見、仕事と関係ないものから解決のアイデアが生まれたりもします。そのために、日頃から映画を観たり、イベントに参加したり、美術館に行ったり、できるだけ視野を広げておくことの大切さを研修ではお伝えしています。