「さだめる」「かきまぜる」「つなげる」リフレクション

 もうひとつ、八住さんが行っている研修やワークショップの大きなテーマに「リフレクション」がある。経験学習における「リフレクション」は、「(業務の)振り返り・内省」を意味し、日々の仕事を振り返ることで気づきを得ることを指す。

八住 仕事のさまざまな経験をリフレクションし、ありたい自分になるための気づきや学びを得るのが経験学習です。それは決して難しいことではなく、実は、人は普段からリフレクションを無意識に行っているのです。「あの時、こうすればよかった」と思うことはよくありますよね。それがすでにリフレクションの始まりです。経験を振り返って気づいたことを教訓化し、それをさらに実践するのがリフレクションの基本ですが、頭では分かっていてもなかなかしっくりこない。通常のワークショップでも、リフレクションを行うことそのものが目的になってしまって、何のためにリフレクションをするのか分からない、というケースがあります。

 私は、リフレクションの方法を「さだめる」「かきまぜる」「つなげる」と分類し、研修やワークショップのテーマごとに選択し、皆さんに伝えています。「さだめる」は、目標設定をするためのリフレクション。先ほどお話ししたように、何のためにリフレクションするかをまず把握します。リフレクションは、振り返りという意味から「過去」のイメージがありますが、実は未来志向でもあります。未来の「こうありたい自分」を、これまでの経験の延長線上に「さだめる」のです。また、リフレクションは、事後に振り返るだけでなく、いま、その日、その場で振り返ることも大切です。その場で起こったこと、思っていること、考えていることを、その瞬間でもいいし、その日でもいいので、ポイントポイントを振り返って深め、意味づける「かきまぜる」リフレクションをするのです。「つなぐ」は、ある一定の期間を振り返るリフレクションです。期間は、一週間でも一年でも、これまでの人生でも結構です。「(その期間に)こういうことがあって、それらを通じてどんな気づきを得たか」と振り返っていく。「かきまぜる」リフレクションと「つなぐ」リフレクションの組み合わせもありです。「かきまぜる」で振り返ったポイントをつないでいくと、「いまこうあるのは、あのときこうだったから」と意味付けすることができますから。

 八住さんが参画する「Reflection Method Laboratory」(RML)では、「リフレクションカード」を使い、ゲーム感覚で気軽に「気づき」を引き出すことを行っている。

八住 何もない状態でリフレクションするのはなかなか難しいですが、リフレクションカードにはその人の経験から気づきを引き出す「問い」が書かれているので、聞くほうも答えるほうも話しやすくなります。研修でのグループワークではさまざまなメンバーから問うことができますし、それぞれの目線からのフィードバックもあるので、自分では分からなかった気づきも生まれやすくなります。