さらに難しいことに、中国は7月から「改正反スパイ法」を施行し、外国人などによる自国へのスパイ行為の取り締まりを強化している。これにより、中国に在留する日本人の安全が一層脅かされると不安視されている。
というのも、かねて中国では、日本人がスパイ行為に関わったなどとして拘束される事例が相次いできた。スパイ行為の定義が拡大されたことで、取り締まりがさらに強化される懸念がある。
要するに、中国への過度の経済的依存は、有事の際に日本の防衛力や安全保障体制の機能不全を引き起こす恐れがある。機密情報の保持や、中国に在留する日本人の安全保護が難しくなるリスクもある。
では今後、日本は中国との関係をどうしていくべきなのか。
日本が取るべき方針は「デリスキング」ではなく
「デカップリング」?
ここで米国の対中戦略に目を向けると、現在の彼らの手法は、中国リスクの低減を図りながら関係を維持する「デリスキング」だ。米国内や欧州、日本の経済界からの「中国との経済関係を維持したい」という意向に配慮したものだ。
しかし今後、中国との経済的な分断を図る「デカップリング」へと米国の戦略が変化する可能性も否定できない。その時、日本はどう行動すべきかが問題となるだろう。
この連載では、日本政府は「デカップリング」を行い、中国との関係を絶ち切っても経済的に十分やっていける体制を築くべきだと提案してきた(本連載313回)。前述の通り、中国への過度の経済的依存には深刻な問題につながるリスクがあるためだ。
もちろん簡単な話ではないが、ここでカギとなるのが英国の存在だ。日米同盟を「日米英」の強力な同盟へと進化させ、日本・米国・英国・英連邦諸国を股にかけた巨大な経済圏を構築すれば、日本による「デカップリング」も不可能ではなくなってくる。
中国のGDPは約15兆ドルに拡大している(2020年度実績、以下同)。2010年に日本を抜き、現在は日本の約3倍の規模に達している。この事実に日本人は臆してしまいがちだ。また、日本企業が生き残るためには中国の巨大市場が必要不可欠という思い込みがある。
だが、日本・米国・英国・英連邦が一つの経済圏となれば、GDPの合計は約37兆ドルとなり、中国をはるかに上回る。まずは単純に経済規模で中国を凌駕できることが、日本人の心理には重要である。