8日、中国・北京の釣魚台国賓館で握手をするジャネット・イエレン米財務長官と中国の何立峰副首相8日、中国・北京の釣魚台国賓館で握手をするジャネット・イエレン米財務長官(左)と中国の何立峰副首相 Photo:Pool/gettyimages

表面上は対立だが
水面下では対話の米中関係

 2023年上半期を総括し、下半期に向けて示唆するような、中国外交の一幕であった。

 7月6日~9日、ジャネット・イエレン米財務長官が中国を訪問した。同財務長官の訪中に関しては、過去半年を含め、米中当局の間で終始交渉のテーマであり続けた。

 例えば、今年1月、世界経済フォーラム(ダボス会議)に際してスイスを訪問したイエレン長官と劉鶴国務院副首相(当時)がチューリヒで会談を行い、マクロ経済や金融政策を巡って両国が意思疎通と政策協調を深化させていく旨で合意した。劉鶴はイエレンに対し、今年の適切な時期の訪中を要請し、イエレンも前向きに検討すると返答した経緯がある。

 それから間もなく、中国偵察気球事件が勃発し、2月初旬のブリンケン国務長官の訪中が延期になり、米中関係は一層の緊張と相互不信に見舞われた。一方、この期間も、5月に王毅中央政治局委員とジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官がウィーンで会談を行うなど、両国間のハイレベル協議は継続されてきた。

 できる分野で協力はする、競争も辞さないけれども、衝突・対立を避けるためのガードレールはしっかり敷いておこうという、昨年11月の米中首脳会談での合意が一定程度体現されてきたといえる。

 それを象徴していたのが、前回コラムで扱ったブリンケン訪中であり(習近平国家主席とブリンケンの会談は、中国側の戦略的意図、覇権的野心を赤裸々に主張したものだった)、今回のイエレン訪中も、表面上は対立しつつも、水面下では対話をしていこう、という米中戦略的競争関係の実態を如実に表しており、この趨勢は下半期も続いていくものと思われる。