国連の「改善要求」、日本のマスコミにとってどうでもいいワケ

 いろいろなご意見があるだろうが、実際にマスコミで働いていた経験のある立場で言わせていただくと、そのような話がマスコミにとって「どうでもいい」ということが大きい。

 日本のジャーナリズム業界は「自分たちが設定したストーリーと矛盾のある話は報道する価値がない」という感じで目をそらして、「報道しない自由」を行使するクセが強いのだ。

 一体どういうことかわかっていただくのに、うってつけのケースがある。2023年7月30日に開かれた「信者の人権を守る二世の会」主催の第3回公開シンポジウムだ。

 これは旧統一教会の二世信者たちが集まってできたものだ。安倍晋三元首相殺害事件後に一部の脱会した二世や山上徹也被告ばかりが「二世のすべて」として報道され、深刻な人権侵害に陥っている問題について話し合うというものだ。

 そのシンポジウムの中で、拉致監禁問題を取材しているノンフィクションライターの福田ますみ氏が、取材に訪れていたジャーナリストの鈴木エイト氏に対して、こんな質問をした。

「後藤徹さんも来ていますが、後藤さんは12年5カ月監禁されてました。それについて鈴木エイトさんは『ひきこもり』と言った。これはどうしてなんでしょうか」

 すると、鈴木エイト氏は「どうでもいいです。ご自由に受け取ってください」と回答。さらに、その後SNSで「教団側からメディアへの質問の前提がおかしい」と言及した上で、ご自身の発言をこう補足した。(以下、一部引用)

「さすが、鈴木エイトさん!拉致監禁なんてマインドコントロールされている連中が被害者ヅラした自作自演だろ!」という声が多く聞こえてきそうだ。そう、日本のマスコミもまさしく同じ考えだ。

 マスコミで働く人の多くは、拉致監禁問題というのは、教団が霊感商法など世間の批判をかわすため、洗脳をした信者たちに被害者ヅラでアピールをさせている、という「ストーリー」が骨の髄まで染みついている。だから、その「正しいストーリー」から逸脱する、信者が人権侵害にあったとか、信者がこんなにひどい目にあったなんて話は、報道する価値もない「どうでもいい」ことなのだ。

 どうでもいいことなので、国連が騒ごうが、アメリカ政府が苦言を呈そうがスルーをするというわけだ。