都合のいい「ストーリー」以外を黙殺する記者クラブ

 そういうマスコミ関係者の話を聞いているうちに、実は彼らが世間一般の人々よりも「ストーリー」に固執していることに気づいた。

「中立公平」とか「客観報道」とか言うわりに、「旧統一教会は反日カルト」「信者はマインドコントロールされているので話を聞いても無駄」という固定概念がビタッと定着していて、そこから1ミリでもズレた話は「どうでもいい」「ボツ!」と報道しない傾向がある。

「そんなのは貴様の勝手な妄想だ」というお叱りをマスコミ関係者から頂戴しそうだが、マスコミの皆さんが都合のいい「ストーリー」以外の話を黙殺するという問題を、わかりやすく示した実例がある。

 記者クラブだ。

 ご存じない人も多いだろうが、記者クラブとは世界でも珍しい日本独特のシステムで、政治や行政の取材を、特定のメディア企業の記者だけに限定できるというものだ。海外からは「癒着と不正の温床」と批判されてきた。たまに報じられる官僚のセクハラや、記者の過労死はこの閉鎖的な「ムラ社会」が影響している。

 なので、ご多分に漏れず、記者クラブを国連も問題視していた。2016年、日本のマスコミを調査した国連の特別報告者、デビッド・ケイ氏が外国特派員協会で会見を行って、このような苦言を呈して「記者クラブ廃止」の必要性を訴えた。

<もし日本のジャーナリストが独立、団結、自主規制のためのプロフェッショナルなメディア横断組織をもっていたなら、政府の影響力行使に容易に抵抗することができたであろう。しかし、彼らはそうしない。いわゆる「記者クラブ」制度はアクセスと排除を重んじ、フリーランスやオンラインジャーナリズムに害を与えている>

 だが、テレビや新聞で「記者クラブ」問題が扱われないことからもわかるように、マスコミはこの問題をスルーしている。なぜかというと「記者クラブは権力の不正を監視する素晴らしい制度」という自分たちの「ストーリー」と矛盾するからだ。

 ジャニー氏の性加害も、もともとマスコミが望んでいた「ストーリー」ではない。だから、何十年もみんなで協力をして闇に葬ってきた。BBCという海外メディアが騒いだから渋々やっているだけで、できれば触れてほしくなかった。

 ジャニーズという巨大なエンタメで稼ぐマスコミにとっては、この問題は本音を言えば今でも「報道する価値がない」「どうでもいい」ことなのではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。
・13段落目:旧統一教会から脱会させたいという家族の依頼を受けたキリスト教関係者、被害者救済を掲げる弁護士などが、信者を拉致して、→旧統一教会から脱会させたいという家族が、キリスト教関係者や被害者救済を掲げる弁護士などからアドバイスを受けて信者を拉致して、
(2023年8月11日21:35 ダイヤモンド編集部)