老親リスクの最たるものが介護、特に認知症
介護施設に移る基準を決めておく
もしも親が身体機能の低下を自覚しているようであれば、【介護サービスを利用するための手続きについて誰に頼むのか】を早めに決めておくべきです。多くの場合、現役世代のみなさんになるわけですが、ある日突然SOSの電話を受けるよりも、事前に予告しておいてもらったほうがいいのは明らかです。
認知症の場合は少し厄介で、本人に自覚がない場合がほとんどです。ですから、「家族の誰かが異変を感じたら即、物忘れ外来および入院治療の段取りをするからね」と、言質を取っておくようにしてください。そうすれば、いざその段になった時、みなさんもためらうことなくアクションをとることができるからです。
同時に、【自宅から介護施設に移るときの基準】も決めてもらうようにします。よくあるのは、「自力で排泄ができなくなったら」「認知症の症状が出たら」「意思疎通が取れなくなったら」などですが、現役世代のみなさんの仕事や家庭へのインパクトを考えれば、一日も早く施設に入ってもらうほうが、結局は本人も家族も助かるし、安心かつ安全だということを覚えておいてください。併せて、施設に入るとしたらどんな物件がいいのか。エリア・予算・必須サービス(そこで暮らすうえで欠かせない条件)については具体的に把握しておくべきです。施設探し・施設選びに奔走するのは、他でもない現役世代のみなさんなのですから。
無料がん検診で高齢者のがん摘出手術が急増
しかし、手術+がん治療は本当に必要?
全国の自治体で、後期高齢者向けの無料がん検診が盛んです。タダゆえに盛況なわけですが、一定の割合で生体検査に回される人が出てきます。本人は痛くもかゆくもないのに、です。よく「早期発見・早期治療」とは言われますが、日常生活に何ら支障のない70代、80代の人がカラダにメスを入れ、術後には過酷な抗がん剤治療と放射線治療が待っている……。本当にそれでいいのかは考えたほうがいいでしょう。
そして、がんに限らず、【手術をオファーされたらどうするか】という選択肢は複数想定しておきたいところです。さらに、病院で最期を迎える場合の延命治療に対するスタンス。自力で食べられなくなった際の胃ろう。排泄困難になった時の透析。呼吸困難になった場合の人工呼吸。これらを良しとするのかどうかについても、親の意向を聞いてみましょう。話しづらいことではありますが、あらかじめ本人の意向を聞いておかないと、後々、現役世代のみなさんが大きな心痛を抱え込むことになります。
こういう話題は誰しも好んではしたがらないものです。それでも、終末期医療(ターミナルケア)に関する要望を明らかにしてもらうことはとても重要ですし、「今、元気なうちでなければ決められないことなのだ」と認識してもらわなければなりません。