人間、最後は健康とお金
財産周りで最低限確認すべき事項とは
人間、最後は「健康」と「お金」。センシティブなテーマではありますが、お金をどうするかはいちばん重要な話です。老親亡き後の“争族”を回避するためにも、最低でも以下の3つを確認しておかねばなりません。
まずは【相続権者の全容】です。みなさんが知らないところに、親が財産を渡すべき非嫡出子や、財産を分与したいと思っている特別な誰かがいるのかどうか。その場ですぐに答えてもらう必要はありませんが、老親の判断能力と意思疎通能力が損なわれないうちに明らかにしてもらうよう伝えておく必要があります。
次は、【老親名義財産の全容】です。ほとんどの方は、実家の土地・家屋等の不動産と、預金等の金融資産になります。老親に判断能力がなくなってしまったら、直系の子どもであっても、預金の引き出し、不動産の譲渡や名義変更ができなくなります。これはとても不便なことです。この事態を回避するには、元気なうちに「定期預金解約と普通預金への振替」「株など証券類の現金化」「不動産管理の委任」等を手続きしてもらうことです。そして、普通預金口座については暗証番号も教えてもらうようにします。これをしないまま認知症になってしまって、赤の他人である成年後見人の管理下に置かれることを望むのか、という話です。
最後は、【財産分与の基本方針】です。ひとりっ子の場合は問題ありませんが、みなさんに兄弟姉妹がいる場合、「公平」か「平等」かは大問題です。公平というのは、老親が子どもたちを査定して、評価に応じて承継させる財産の金額に差をつけるという意味です。傾向として、介護や医療をはじめとする身の回りのことをサポートしてくれる子どもには多めに渡したいと考える親が多いです。平等というのは、難しいことは一切考えず、民法の規定通りに等分に分け与えることです。
ちなみに、建前としては「平等」と言いながら、いざ相続時に遺言が出てくると「公平」になっているケースが多いものです。こうなると、「話が違うじゃないか」と言い出す人が出てきて、相続額の多い兄弟姉妹に対して、「親を言いくるめて書かせたのでは?この遺言は無効だ」などと言いはじめ、結局は泥沼に……というのがよくあるパターンです。いずれにせよ、財産まわりのことは早いうちから基本方針を明らかにした上で、具体的な承継の段取りをしておきましょう。子どもたち全員で共有しておくことが理想です。詳しくは、下の記事をお読みください。
参考記事:遺言を書くから遺恨が残る!終活サポート専門家が教える「財産の譲り方」
エンディングは
「立つ鳥跡を濁さず」の精神で
新聞を開けば葬儀関連の広告が花盛りです。葬儀にコストをかける人が大幅に減って、最低限のゼロ葬・直葬・家族葬が今や主流になりました。数百万円もお金をかけて、通夜・告別式を行うのは今や少数派です。
実際に葬儀を行う際には、亡くなった本人は既にこの世にいないわけですから、現役世代のみなさんは、葬儀に対する本人の要望を聞いておく必要があります。
まずは、【葬儀の予約の有無】。すでに予約済みで前払いしているにもかかわらず、そのことを遺族が知らず、葬儀社が丸儲けというケースはよくあるので要注意です。次に、子どもに段取りを託すということであれば、【希望する葬儀の形態と予算】。最後に【死後の諸手続き】について。具体的にはお墓の管理や法事等の祭祀関連をどうするかです。場合によっては、もう墓じまいしてもいいか、場所を移すか、といったことも確認してください。これらはほとんどの場合、誰か一人の子どもが行うことがほとんどです。そうだとすると、託される子どもとしては、必要なお金は先に渡しておいてもらわないと困ります。