息子・孫たちの不祥事続出の背景に「少子高齢化」?

 では、なぜ最近、「世襲不祥事」が相次いでいるのか。まず考えられるのは、「世襲のやらかしが“見える化”されるようになっただけ」というものだ。

 大企業経営者や名家の御曹司が性犯罪やモラルを欠いた行為をするなんてことは今に始まったことではないが、昔はそれらをカネや政治の力で「もみ消す」ということができた。しかし、今はネットやSNSの普及に加えて、そういう不正はすぐにバレる。

 確かに、筆者が週刊誌記者をしていた25年前くらいは、大物政治家や有名社長の息子が集団強姦をしたとか、詐欺で捕まったなんて情報提供はよくあったが、それをマスコミが報じることはなかった。そういった過去の事案がもみ消されたかどうかは定かではないが、ジャニー喜多川氏の性犯罪といい、かつてマスコミがスルーしていたネタが、週刊誌やネット・SNSに押される形で、公然と追及されるムードになったということはあるかもしれない。

 ただ、筆者はそこに加えて、もうひとつ、「世襲不祥事」が増えている要因があると考えている。それは「少子高齢化」だ。

 ご存じのように今、日本は毎年、鳥取県の人口と同じ数の人間が減っている。それはつまり、日本では毎年、鳥取県の人口と同じ消費者が減っていくということなので、国内の人口増加の後押しを受けて成長をしてきた企業ほど「地獄」を見る。

 つまり、今、経営に関わった2代目、3代目というのは、創業者である父や祖父が構築したビジネスモデルがガラガラと音を立てて崩れていく、というシビアな現実を目の当たりにしているということなのだ。

 例えば、わかりやすいのは、山田養蜂場の創業者・山田政雄氏が独自の技術を編み出したことで「原点」として今もビジネスの中心に置いているローヤルゼリーだ。農水省の「養蜂をめぐる情勢」によれば、ローヤルゼリーの国内生産量は政雄氏が社長を務めて、英生氏が専務をしていた昭和60年(1985年)には1万2473キログラムあった。しかし、そこから年々減少をして、令和3年には、およそ6分の1の規模である2083キログラムになっている。

 もちろん、このような「少子高齢化という逆風」を乗り越えて、時代を先読みして、祖父や父がやっていた事業をアップデートしていく世襲も多い。国内の観光客だけを相手にする老舗旅館ではジリ貧だ、と「外国人観光客」にいち早く目を向けた星野佳路氏などその代表だろう。

 しかし、世の中はそういう新しいチャレンジができる世襲ばかりではない。