御曹司ならではの「発散」とは
偉大な祖父や父のやってきたことを、忠実に引き継いでいるのに「結果」が伴わないことで無力感に包まれて情緒不安定になっている2代目もいるだろう。また、古参社員から「無能」「ばか息子」と陰口をたたかれていないかと被害妄想に陥っている3代目もいるだろう。
世襲は坊ちゃん育ちが多いので、一般的にハングリー精神が乏しく、挫折にも弱い。だから、「少子高齢化」という脅威に立ち向かう前に、メンタルがやられてしまう。
つまり、最近の若い世襲経営者の中には、急速な少子高齢化で、父や祖父がつくったビジネスモデルが「逆回転」してしまったことで自分を見失って、心がポキンと折れている人が多い可能性があるのだ。
では、大概の心が折れた人はどんな行動をとるのかというと、「暴走」をする。自分が不幸なのは首相が悪い、世の中が悪いと自作拳銃や爆弾をこさえるような人もいれば、車内で乗客に刃物で斬りつける人もいる。
ただ、世襲の御曹司はそういうわかりやすい犯罪には流れない。なぜかと言うと、基本的に「カネ」と「力」があるからだ。それを使って、坊ちゃんならではの暴走をする。
例えば、山田養蜂場の元専務のようにパパ活に励んで、札束をちらつかせて自身の性欲発散にのめり込む。あるいは、ビッグモーターの前副社長のように、「父親に比べて無能」と陰口をたたかれないように、「恐怖政治」をすることで、社員にナメられないように服従させる。
こういう「カネと力を用いた暴走」というのは、世襲の坊ちゃんたちが、尊敬する父や祖父も経験したことがない「少子高齢化」という未曾有の脅威を前にして、アップアップになっているから、というのが筆者の考えだ。