中央銀行vsインフレ “新常態”時代の闘い#2Photo:EPA=JIJI

利上げ局面の終盤を迎えつつある欧米の中央銀行。一方、日本銀行はYCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化に踏み切ったものの緩和継続の姿勢を崩さない。金融政策の方向性が相違する中、円相場はどう動くのか。特集『中央銀行vsインフレ “新常態”時代の闘い』(全7回)の#2では、9人の有力ストラテジストに、前提となるインフレの予測と共に相場の見通しを聞いた。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

欧米の大幅利上げで
インフレはピークアウト

 中央銀行による急速かつ大幅な利上げのかいあって米国や欧州のインフレは天井をつけた。インフレとの闘いは終盤戦に差し掛かっている。

 FRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利であるFF(フェデラルファンド)金利を、2022年3月から23年7月までで0~0.25%から5.25~5.5%にまで引き上げた。ECB(欧州中央銀行)の預金ファシリティ金利は、22年7月から23年7月まででマイナス0.5%から3.75%にまで引き上げられた。

 23年7月の米国のCPI(消費者物価指数)上昇率は前年同月比3.2%。22年6月の同9.1%をピークとして低下してきている。ユーロ圏のHICP(EU〈欧州連合〉基準の消費者物価指数)の前年同月比上昇率も22年10月の10.7%を最高値として23年7月には同5.3%と半分の水準にまで低下した。

 日本に目を転じてみよう。23年7月の生鮮食品を除く消費者物価上昇率は前年同月比で3.1%。22年4月以降16カ月連続で目標である2%を超えている。ピークアウト感はない。

 一方、この間の日銀の金利政策の変化は、22年12月にYCCにおける長期金利の変動許容幅をゼロプラスマイナス0.25%から同0.5%へ拡大したことと、23年7月に同0.5%の変動幅を“めど”として1%を実質的な上限としたことである。その上で金融緩和を継続する姿勢を崩していない。

 日本と欧米との金利差が拡大してきたことは一目瞭然である。それが22年春以降の大幅な円安進行の一因となった。

 また、ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギーや穀物の価格上昇によって、その多くを輸入に頼る日本の貿易収支の赤字が拡大したことも需給面からの円安要因である。

 インフレとの闘いの局面、金融政策の方向性が日本と欧米で相違する状況下、円相場はどう動くのか。9人の有力ストラテジストへのアンケートに基づいて、次ページ以降、円相場の行方を予測する。