異次元の円安が進んだ2022年を経て、今後の円相場はどこへ向かうのか。特集『総予測2023』の本稿では、日本銀行在籍時代に、為替介入の実務担当も経験した相場のプロ2人に、「介入の功罪」や円安の背後に潜む根本問題、今後の中長期的な相場の展望に至るまでを語り尽くしてもらった。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
円安の裏に「低成長」の根本問題
実務経験者が語る“介入の功罪”とは?
──2022年は急激な円安・ドル高が進みました。この背景をどう分析していますか。
佐々木 構造的に最も大きな要因は貿易赤字とみていて、22年の赤字額は過去最大規模になる見通しです。加えて、これだけ円安でも企業の生産活動が日本に戻ってこないという現実があります。
もちろん日米金利差の影響もありますが、確かに22年9月は大きく差がついたものの、実は急速な円安が進んだ7~8月はさほど金利差があったわけではない。インバウンド需要が戻った際、貿易赤字から発生する円売りを多少相殺できる可能性はありますが、構造的な背景は容易には戻りません。
山本 日米金利差に関しては、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを続ける中で、日本銀行が動けず、日本の金利が上がらないという点で構造的な問題ともいえそうです。なぜ日銀が利上げできないかといえば、日本経済の足腰が弱い、低成長だからです。
潜在成長率がほぼゼロ近辺で、生産年齢人口が減り、成長産業も育っていない。この先、経済が伸びる期待は薄く、そんな国には海外からも資金が集まりません。
政府・日銀が9~10月に行った為替介入で、1ドル=152円近辺まで円安が進んだ10月21日の介入が効いたように見えたのは、米経済誌によるFRBの利上げ鈍化検討報道が重なったことが大きい。後世からは効果的な介入に見えるかもしれませんが、実際は“追い風参考記録”。それまでの介入は効果を発揮しておらず、結局、日本経済の弱さという根本的な問題が裏にあるのです。
──お二人とも日銀在籍時代、為替介入の実行部隊としての実務経験があります。為替介入の効果をどう考えていますか。