中央銀行vsインフレ “新常態”時代の闘い#1Photo:PIXTA

消費者物価上昇率が16カ月連続で物価目標の2%を超えて推移する中、日本銀行の緩和継続は適切な施策なのか。インフレを高進させてしまった欧米の中央銀行の轍を踏む可能性はないのか。特集『中央銀行vsインフレ “新常態”時代の闘い』(全7回)の#1では、10人の著名エコノミストに、今後の日銀の金融政策の行方、物価上昇率、経済成長率についてアンケートを実施した。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

物価上昇率は本当に低下していくのか
10人の著名エコノミストが大胆予想

「先行きは価格転嫁の影響が減衰するもとでプラス幅を縮小する」

 日本銀行がYCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化を決定した7月28日。植田和男総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で物価の見通しをそう語った。

 足元では日銀の物価目標2%を超える物価上昇が続く。

 7月の生鮮食品を除く消費者物価指数上昇率(以下、消費者物価上昇率)は前年同月比3.1%。目標の2%を16カ月連続で上回った。総合ベースでは、6月同3.3%、7月3.3%と2カ月連続で米国の上昇率6月同3.0%、同3.2%を上回った。

 表面上の数字だけ見れば、物価目標はすでに達成されている。それどころか、このまま放置していて大丈夫かとすら思える。

 2022年春から始まった今回の日本のインフレは、ロシアのウクライナ侵攻を受けた原油価格、小麦など穀物価格の高騰による輸入物価上昇がきっかけだ。22年半ば以降、それに円安が拍車を掛けた。上昇分を企業が川下の価格に転嫁していくことで消費者物価が上昇し始めた。

 その後、コロナ禍後の経済再開で労働需給が逼迫し生じた賃金上昇圧力、そしてコロナ禍で支出された各種給付金などに支えられた繰り越し(ペントアップ)需要が押し上げ要因となり、3%を超える上昇率が続くに至る。

 現在、エネルギーや資源価格は前年比で見れば下落した水準で推移している。そのため、日銀は価格転嫁が一服すれば物価上昇は落ち着くとみているわけだ。

 では、日銀の見立て通りに消費者物価上昇率は本当に低下していくのか。今回、10人の著名エコノミストに日銀の金融政策動向、物価上昇率、経済成長率について、アンケートを実施した。

 日銀が、21年半ばの初期の物価上昇を“一時的”と評し、金融引き締めに動かずインフレの高進を招いてしまった欧米の中央銀行の轍を踏むリスクはないのか。次ページ以降、アンケート結果に基づき検証していく。