このほかにもファーレ立川には、広大なエリアに109もの芸術作品を取り入れたパブリックアートの世界の金字塔。ドナルド・ジャッドにジョセフ・コスース、アニッシュ・カプーア、宮島達男に篠原有司男……と、すでに著名だった芸術家のものから、約30年の間にみるみる知名度を上げた芸術家のものまでさまざまな作品がある。
これらの作品はベンチや歩道橋、街灯といった都市の機能を組み込んでいるものが多く、街とアートが溶け込み街全体が野外美術館として楽しめる。
ファーレ立川はパブリックアート全109点を鑑賞したいという人のために、無料の「ファーレアートマップ」を用意するほか、スマホアプリ「ファーレ立川アートナビ」なども公開している。また、1997年に設立された市民によるボランティア団体「ファーレ倶楽部」による見学ツアーが不定期で開催されており、住民のパブリックアート愛が他所よりも濃厚だ。近年、たてつづけに美術館も開館し、アートの街に変貌した立川をぜひ訪れてみよう。
西新宿のシンボル
《LOVE》
ロバート・インディアナ 1995年/新宿アイランド
高層ビルが建ち並ぶ西新宿の交差点で目を引く鮮やかな「LOVE」の文字は、アメリカの現代美術家、ロバート・インディアナ(1928~2018)の作品《LOVE》だ。本作は新宿アイランドと西新宿のシンボル的存在となっている。
インディアナは広告サインや交通標識、会社のロゴといった多くの人になじみのある意匠を元にドローイングを描くポップアート作家だ。子ども時代に教会でみた聖句「GOD IS LOVE(神は愛なり)」にインスパイアを受け、1960年代よりこのフレーズを派生させた作品を発表してきた。当時のアメリカはベトナム戦争への反対運動や公民権運動から生まれたヒッピー文化の全盛期。「LOVE&PEACE」が提唱されたこの時代とみごとに共鳴していた。
本作はもともと、1964年にニューヨーク近代美術館(MoMA)のクリスマスカードの図案として描かれたもので、1970年に立体化し、インディアナポリス美術館を皮切りに世界各国に配置されるようになっていく。
本作品は、とにかくわかりやすいことが特徴だ。赤、緑、青の配色は、インディアナの父親が勤めていたガソリンスタンドの看板と、故郷インディアナ州の青空の色からとったものだ。グレーと白を基調とした建物の前に置かれることで、遠くからでも非常に目をひいている。作品は新宿駅方面に正面を向けており、駅からやってきた人が遠くからでも作品の存在を認識できる。
さらに、「LOVE」という、小学生でも意味がわかる単語であることもわかりやすい。現代美術はわかりにくいといわれるが、この作品に関しては見えた文字をそのまま読めば作者の意図が想像できる。駅前にある多くのパブリックアートは、残念ながら風景のなかに埋没しているが、この作品だけは風景に溶けこむことなく、新宿の街で「浮いた」存在のままだ。だからこそずっと愛されつづけているのだろう。
ちなみに、新宿アイランドに配置された10点のうち、この作品以外はすべて抽象的な立体作品だ。アメリカン・コミックを絵画にしたことで知られるポップアートの巨匠、ロイ・リキテンスタインの作品《Tokyo Brushstroke I,II》でさえ抽象彫刻。どの作品も素晴らしいものの、《LOVE》のわかりやすさがより際立っている。
「LOVE」は千葉県にも存在する!?
『パブリックアート入門』(イースト・プレス)浦島茂世 著
そして、ロバート・インディアナの《LOVE》は、じつは日本にもう一体存在する。千葉県稲毛区、京成電鉄千葉線みどり台駅の近くにあるロータリーにひっそりと佇んでいる。
この作品は、2014年に現代芸術振興財団が千葉市に寄贈したもの。株式会社ZOZOの創業者で、実業家の前澤友作が財団を創設し、現代美術の普及活動などを精力的に行っている。みどり台駅は、ZOZO本社の最寄り駅である。この場所に作品が設置されたのは、前澤氏の千葉愛ゆえ。設置に際して、財団は千葉市や地元の自治会と何度も交渉を重ねて同意を得たという。
異なるシチュエーションにあるふたつの《LOVE》の見え方や印象がどう変わるのか、実際に足を運んで見比べてみてほしい。







