さらに、「LOVE」という、小学生でも意味がわかる単語であることもわかりやすい。現代美術はわかりにくいといわれるが、この作品に関しては見えた文字をそのまま読めば作者の意図が想像できる。駅前にある多くのパブリックアートは、残念ながら風景のなかに埋没しているが、この作品だけは風景に溶けこむことなく、新宿の街で「浮いた」存在のままだ。だからこそずっと愛されつづけているのだろう。
ちなみに、新宿アイランドに配置された10点のうち、この作品以外はすべて抽象的な立体作品だ。アメリカン・コミックを絵画にしたことで知られるポップアートの巨匠、ロイ・リキテンスタインの作品《Tokyo Brushstroke I,II》でさえ抽象彫刻。どの作品も素晴らしいものの、《LOVE》のわかりやすさがより際立っている。
「LOVE」は千葉県にも存在する!?
浦島茂世 著
そして、ロバート・インディアナの《LOVE》は、じつは日本にもう一体存在する。千葉県稲毛区、京成電鉄千葉線みどり台駅の近くにあるロータリーにひっそりと佇んでいる。
この作品は、2014年に現代芸術振興財団が千葉市に寄贈したもの。株式会社ZOZOの創業者で、実業家の前澤友作が財団を創設し、現代美術の普及活動などを精力的に行っている。みどり台駅は、ZOZO本社の最寄り駅である。この場所に作品が設置されたのは、前澤氏の千葉愛ゆえ。設置に際して、財団は千葉市や地元の自治会と何度も交渉を重ねて同意を得たという。
異なるシチュエーションにあるふたつの《LOVE》の見え方や印象がどう変わるのか、実際に足を運んで見比べてみてほしい。