こんなときは、「お湯に入るときはゆっくり座ってね」と言えたらOKです。

 ここで注意事項を3つ。

(1)思わず「否定形」を使って、「バッシャーンって入らないで!」と言ってしまいがちな場面ですが、この言い方は伝わりにくいので要注意です。「否定形」だと「これをするのはダメだよ」という情報しかないので「何をすればいいのか」を子どもが考えないといけなくなります。そして、子どもはすぐによい答えを出せないかもしれません。

「否定形」は伝わりにくいし、成功率も低いんです。だから、「○○してね」と代わりの行動を教えたほうが手堅いし、親御さんも楽ですよってことなんです。

(2)子どもに注意する際は、シンプルに、明確に伝えてあげてください。講座をしていても、「丁寧に伝えよう」という思いから、話が長くなる親御さんがたくさんいらっしゃいます。でも、話が長いと伝わりにくくなります。

(3)この対応例はあくまで一例です。みなさんのご家庭のルール・価値観によって対応方法は変わってくると思います。なので、対応例とみなさんの考えた対応が異なっていても気にしないでください。方向性が合っていればOKです。唯一の正解なんてものはありません。

 最後に考えるのはこんな場面です。

書影『子どもも自分もラクになるどならない「叱り方」』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『子どもも自分もラクになるどならない「叱り方」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
伊藤徳馬 著

 ママと太郎くんは湯船に浸かってゆっくりしていました。しかし……、太郎くんはすました顔でしれっとお湯の中でおしっこをしてしまいました。太郎くんの周りのお湯がうっすらと濁っています。

 さあ、言いたいことはいっぱいあると思いますが、もしもシンプルに次回からはどうすればよいのかという点について、「~してね」とか「~するんだよ」と伝えるとしたら、こんな言い方がいいと思います。

「おしっこはトイレでしてね」
「お風呂に行くとき、おしっこが出そうなら先にトイレに行くんだよ」
「お風呂でおしっこがしたくなったときはママに教えて」

 いやー、わかりますよ。この場面、そりゃあ思わずドッカーン!となりますよね。

「もう!いい加減にしてよ!汚いでしょ!だからお風呂に入る前に『トイレに行く?』って聞いたでしょ!信じらんない!このお湯どうするの!?」みたいな。

 そう言ってしまうのは仕方のないことですが、問題となるのはこのドッカーン!で子どもにどの程度伝わるのかという点です。

 子どもの問題行動を注意する際には、代わりの行動をシンプルに明確に伝えたほうが子どもにはわかりやすく、次回以降、うまくいく可能性をいくらかは高めることができ、結果的に親御さんが楽になります。

 親御さんが口頭で、「もう、いい加減にしてよ!」と言うのと、「おしっこはトイレでしてね」と言うのとでは労力に差はありませんが、結果がちょっとだけ異なるとしたら、そりゃあお得なほうを選んでいきたいですよね。